鴛鴦被

中国古典名劇選 II [ 後藤裕也 ]

価格:4,620円
(2021/3/13 16:59時点)
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作者不詳の元曲。お嬢様の転落劇と見せかけて、中盤から突如才子佳人ものが始まる。お約束を裏切る展開が続きなかなか面白い作品。

あらすじ
清廉潔白な官吏である李彦実は汚職官吏に弾劾され、都で裁判を受けるべく出立。残された一人娘の玉英は、ひたすら父の帰りを待ちわびる。が、李彦実に路銀を貸していた劉員外は、借金を口実に玉英を我が物にしようとする。知人の尼、劉道姑を通じ、半ば強引に婚礼の約束をとりつける劉員外。しかし、夜中に寺で待ち合わせたところ、見回りをしていた役人に捕まってしまう。一方の玉英は、劉道姑の説得で泣く泣く劉員外を寺で待っていたが、そこへ一夜の宿を求めてきた書生・張瑞卿が通りかかる。劉道姑の
女弟子は彼を劉員外と勘違いし、無理矢理寺へ押し込んで玉英と添い遂げさせてしまう。一夜明けて、相手が劉員外でないと知る玉英。そこで張に夫婦の証として自分の縫った布団を渡し、科挙試験のため上京する彼を見送った。劉員外はほどなく帰ったが、自分以外の男と寝た玉英に激怒。自分の経営する酒場でこき使うように。やがて月日が経ち、見事科挙に合格した張瑞卿は、ふと立ち寄った酒場で玉英を見つける。うまく劉員外を言いくるめて彼女を救い出すと、すぐさま復職していた李彦実と共に裁判を起こす。悪事のばれた劉員外は罰せられ、若い夫婦は無事に結ばれたのだった。

最初にも述べたように、ジャンルのお約束を色々崩しているのが特徴的な作品。序盤の雰囲気なんて一歩間違えば竇娥冤の悲劇まっしぐらだが、突然ギャグみたいな勘違い才子佳人劇が始まってしまう。
才子佳人劇で使われる縁結びアイテムといえばハンカチが代表的だが、本作は布団。それも処女のお嬢様と初夜を共にするのに使ったヤツ。気持ち悪い話だけど、使用直後の布団にはきっと汗とか香とか色んなものが染みついているのは間違いなく、数ある縁結びアイテムの中でもダントツのエロさじゃなかろうか。作者は完全に変態だ。当時はエロ本もAVも無いわけだし、こんなモンを年盛りの若者が手に入れてしまったら、とても学問になど集中できまい。毎晩コイツを抱いて昇天してたはず…と思いきや、作中の張瑞卿はめちゃくちゃ真面目な人間だった。きちんと科挙にも受かるし、玉英との約束も守るし(科挙試験に合格した書生が、宰相の娘と縁談を持ちかけられて故郷で契った女の子を捨てる、なんて展開もよくあるからね)。最初は「私が官吏になればあなたは夫人県君ですよ」なんて自信たっぷりな台詞を吐くから、こいつもしや詐欺ヤローかと疑ってしまった。ごめん。
脇キャラで面白かったのは、逢引きの場所にいた若道姑。俗世への未練たらたらで、李玉英に「劉員外様と結ばれたら私にもいい旦那様を紹介してね(はぁと)」とか、寺の中でイチャイチャするカップルの物音を聞いて自分もむらむらしちゃったりとか。本作に限らず、通俗古典小説の尼僧はろくなのが出てこない。

どのキャラを見ても、恋愛に対する思想が開放的で、やはり元代ならではの作品だと感じる。明清でコレやったら発禁食らいそうな感じ。
意表を突く展開が楽しいので、王道の元曲を読んだ後に本作を読むのがおすすめだと思う。

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