中国マイナー変人列伝 明末南京の妓女・王月生

続くのかこれっきりになるかよくわからないコーナーですが、中国の風変わりな人物をご紹介していきます。

王月生という名を聞いたことがある方は、かなりの中国文学通ではないかと思う。明末南京の妓女である。「板橋雑記」や「陶庵夢憶」などに記録が残されている。

明末南京の色街は、一流の妓女が集う旧院、中等クラスの珠市、さらにその下である南市にランクが分かれており、旧院と珠市ではつき合いも憚られるほど妓女の質に差があったそうな。

で、この王月生は珠市の妓女でありながら、旧院の妓女達をしのぐ名声と美貌を備えた希有な存在だった。「陶庵夢憶」によれば、南京の皇族ですら一晩の宴会の終わりまで彼女を引き留めておくのが困難であり、富豪や役人レベルなら一、二ヶ月前から予約しておかないと会うことすら出来なかったとか。書画や歌に秀で、南京で開かれた歌妓のコンテストでも一位を飾るなど、容姿以外もずば抜けていた。
そんな売れっ子だから、さぞかしサービスもいいのだろうと思いきや、彼女は気位がめちゃくちゃ高く、お客にはもっぱら塩対応だったそうだから面白い。滅多に笑わず、孤高を好み、俗人とはつき合わない、などなどとってもクール。南京のとある若様は、彼女と頑張って一ヶ月も過ごしたが、一切口を開かせることが出来なかった、なんてエピソードもある。そんなんでよく商売が成り立つなぁ。

そんな彼女でも親しくつき合っている人はおり、例えば「陶庵夢憶」の作者である張岱とは狩りに出かけたり船の見送りに出たり、またお茶で有名だった閔老人のもとへは宴会の前に必ず通っていたり、まぁ彼女同様ちょっと癖のある人物が多かったようだ。

最期もなかなか壮絶。蔡香君という男に三千両で無理矢理身請けされ、彼が四川へ赴任した時にもついていったのだが、数年後にかの張献忠が押し寄せ香君は殺害。王月生も捕らえられ張献忠に寵愛されたが、ふとしたきっかけで逆らったため、首を斬られて盆に飾られたという。
うーん、美人薄命とはまさにこのこと。ドラマや映画があってもおかしくないほど数奇な人生だけれど、彼女を題材にした作品は無いのだろうか。ご存じの方がおりましたら是非教えてください。無かったら、いつか自分で書こうかな笑
 

コメント

  1. 黄梅 より:

    この妓女の話は初めて聞きました!そもそも、あまり妓女に詳しくないもので…すごく絵になりそうなのに、全く映像化作品を見かけたことが有りません。柳如是(万茜)とかよかったですし(服飾考証がおかしいと叩かれてましたが)、どんなメディアでも取り上げてくれたら面白そうです!