中華BL小説ガイドブック

中華BL小説ガイドブック きっと好きになる! もっと読みたくなる! [ 中華耽美小説迷倶楽部 ]

価格:2200円
(2025/11/25 10:58時点)
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日本で刊行されている中華BL作品とそれに関する用語や豆知識をまとめたガイドブック。私自身はBLジャンルに全然馴染みがないんだけど、あの岡崎先生が執筆陣にいたのでこれは読まねば!と思い購入。

1章では邦訳されている作品の紹介。本書を買う人達にはわかっている前提なのかもだが、武侠も仙侠も現代も転生もまとめて中華BLです!でひとくくりはちょっと乱暴というか、もう少しジャンルとしての大枠を最初に解説してほしかったかも。転生とかだって日本とまるきり同じではなく、中国ならではの独自性があるだろうし。
例えばBLはともかくブロマンス的なノリはそれこそ武侠御三家(金庸・古龍・梁羽生)あたりでもあったと思うんだよなぁ。千秋は途中まで読んだんだけど、古龍あたりの作品と似たテイストを感じたし。なので武侠・仙侠ものとBLの親和性とか、もう少し深く突っ込んでくれても良かった気がした。

2章は作品を鑑賞するうえで役立つ中国文化の解説。けれども一部のコラムはなんか本筋とずれているような気がしなくもない。別に料理の話なんて中華BLに限らず出てくるしな…。
あと、仙侠系の舞台に六朝時代が選ばれるのって、「山海経」とか「淮南子」を筆頭にした仙侠文化のルーツや空気感があるからだと思ってた(日本でいうと、陰陽師の作品書くなら江戸より平安の方がマッチしてる的な)。乱世とか世家みたいな要素は武侠・仙侠だと時代問わず出てくるので、そこだけで六朝時代を強調されたのもちょっと違和感。というか添付の年表が物凄く雑。紙幅に余裕はありそうだし、1ページに押し込めていいようなものじゃないと思う。清を「ラストエンペラーの時代」と一言で済ませてたのにはさすがにガクッときた。あと、引き合いに出す古典作品がひたすら「西遊記」「封神演義」だけなのもボキャ貧というか……もっと色々あるだろ!!と言いたい。唐代伝奇の剣仙作品とか八仙とか白蛇伝とかさァ! エンタメ関連の専門家を引っ張ってこれなかったのかな。小説のガイドなのに。他にも、ガイドとしては「中華BLの歩み」みたいなジャンル史を紹介してくれた方が良かったと思う。

3章では武侠・仙侠関連の用語や世界観解説。ここが一番面白かった。武侠仙侠の比較表はわかりやすくてとても良い。どうでもいいけど混世魔王って聞いたら私はまず「西遊記」の妖怪の方が浮かぶんだけど「水滸伝」を想起する人の方が多いのだろうか。
翻訳だと、近代以前の中国小説って人物はもっぱら漢字音読みが多いんだけど、中華BLではピンイン読みが主流な模様。となると実在の歴史人物とか出すときも、例えば諸葛亮や曹操をピンイン読み? うーん…。私は文書全体の統一感を大事にしたいクチなので、人物だけピンイン読みで地名とか物の固有名詞は漢字音読みとかにされると気になってしまう。原語のニュアンス~という意見もあるけど、ピンイン読みはつまるところカタカナ読みなので原語発音とはなり得ないし…。まあ最終的には好みの問題とはいえ。

4章は未邦訳作品やインタビューなど。翻訳作品不足は中華BL限らずだけど「三体」や「トワウォ」みたいに爆発的なきっかけが最近は頻繁に起きているので、今後にも期待できるんじゃないだろうか。個人的に中華BLで一番いいと思うのは表紙のイラストが大陸テイストなところ。今後武侠とかが新しく刊行される時は是非同じ感じにして欲しい。

ちょっととっちらかった印象はあるけれども、ライトにまとまった良いガイドでした。特に翻訳作品を網羅してくれているだけでも、このジャンルを追いかけてる人、これから追いたい人達には大変有難い一冊だと思う。