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中華BL小説ガイドブック きっと好きになる! もっと読みたくなる! [ 中華耽美小説迷倶楽部 ] 価格:2200円 |
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日本で刊行されている中華BL作品とそれに関する用語や豆知識をまとめたガイドブック。私自身はBLジャンルに全然馴染みがないんだけど、あの岡崎先生が執筆陣にいたのでこれは読まねば!と思い購入。
1章では邦訳されている作品の紹介。数はそんなに多くないので、もうちょっと紙幅とっても良かったんじゃないかと思う。ところで、中華BLというジャンルのくくりについて大雑把でもいいから知りたかったのだけれど、そこらへんの解説が無かったのは気になった。まあ本書を買う人達にはわかっている前提なのかな。武侠も仙侠も現代ものもまとめて中華BLです!でくくられると普段読まない側としてはちょっと定義が混乱する。カップリングがあればいいってこと?
ところで、BL的なノリはそれこそ武侠御三家(金庸・古龍・梁羽生)あたりでもあったと思うんだよなぁ。千秋は途中まで読んだんだけど、古龍あたりの作品と似たテイストを感じたし。
2章は作品を鑑賞するうえで役立つ中国文化の解説。けれども一部のコラムはなんか本筋とずれているような気がしなくもない。別に料理の話なんて中華BLに限らず出てくるしな…。あと、私は中華コンテンツに深く触れるようになってから「六朝時代」と呼ぶのに慣れてしまって、どうも魏晋南北朝という呼称に違和感がある(大陸ではあんまり魏晋南北朝って言わない気がする)。あと、仙侠系の舞台に六朝が選ばれるのって、その時代に「山海経」とか「淮南子」を筆頭にした仙侠文化のルーツがあるからだと単純に理解してたんだけど違うのかな。
3章では武侠・仙侠関連の用語や世界観解説。ここが一番面白かった。武侠仙侠の比較表はわかりやすくてとても良い。どうでもいいけど混世魔王って聞いたら私はまず「西遊記」の妖怪の方が浮かぶんだけど「水滸伝」の方を想起する人の方が多いのだろうか。
あと、中華BLを読まれる方はカップリングや関係性に注目するから、やはりキャラクター同士の呼び方とかが気になるのか~と感じた。翻訳上の限界もあるから難しい部分だとは思う。基本的に近代以前の中国小説ってもっぱら音訓読みが使われてるイメージだけど、中華BLはピンイン読みが主流な模様。歴史上の人物とか出すときは、例えば諸葛亮とかもピンイン読みにして出すのだろうか。なんか違和感の方が大きいような。他にも名前以外の地名とか固有名詞は音訓読みだから何だか混乱する。
4章は未邦訳作品やインタビューなど。翻訳作品不足は中華BL限らずだけど「三体」や「トワウォ」みたいに爆発的なきっかけが最近は頻繁に起きているので、今後にも期待できるんじゃないだろうか。個人的に中華BLで一番いいと思うのは表紙のイラストが大陸テイストなところ。今後武侠とかが新しく刊行される時は是非同じ感じにして欲しい。