倚天屠龍記之九陽神功・聖火雄風

2022年の香港テレビ映画。監督は王晶と姜國民。
金庸の武侠小説「倚天屠龍記」を改変、もっと正確に言うなら1993年に王晶が撮った映画「倚天屠龍記之魔教教主」のリメイク。「倚天屠龍記之魔教教主」は原作を散々はしょった挙げ句中途半端なところで終わってしまったが、本作は後編の「聖火雄風」と合わせて一応しっかり物語を完結させている。といっても、元ネタの小説が長大で筋書きも複雑なため、はしょり具合が豪快なのは旧作と一緒。

ものがたり
極寒の冰火島で生まれた張無忌は両親と共に中原へ戻る。しかし武林の争いに巻き込まれ両親は死亡。張無忌は冰火島で義父の謝遜に教えを受け、再び中原へ。折しも、蒙古朝廷と組んだ成崑によって武林は混乱の最中。張無忌は母と義父の属していた明教を救うべく六大正派との戦いに身を投じるが…。

長大な原作小説を五分の一くらいに圧縮し、かつ設定もいじりまくっている。なので殆ど別物と考えて楽しむのがいいかも。
キャストは武打星や王晶映画おなじみの顔ぶれが勢揃い。皆さんご年輩なこともあってか、役の年齢もそれに応じて引き上げられている。アクションは動ける人達が多いので見応えあり。でもキャラが多すぎるので一人あたりの出番が減ってしまっているのが悲しいところ。あとCG過剰なのも少し気になる。終盤もオリジナル展開。尺が足りないので蒙古との戦いとか殆ど投げっぱなしになってしまってるけどしょうがない。屠龍刀と倚天剣に出番を作ってくれたのはいい感じ。あと、原作を除けば聖火令がここまで強力な武器として取り上げられている作品も珍しいかもしれない。といっても人間を分裂させたり歯車のように回転させたり意味不明なマジックアイテムと化してるけど。まあ笑えるからいいだろう。
総じてそこかしこにちりばめられた金庸成分を楽しみつつ、アクションを見所とする作品。93年版と一緒に見て時代の流れを感じてみるのも一興。

以下キャスト
林峯/張無忌
年齢が三十代にまで引き上げられて大人の侠客に。それでも初心っぽいのが無忌らしい。前半で九陽真経を修得しているので基本的にほぼ負け無し。せっかくアクションも頑張ってるのに過剰なCGで台無しにされている気がしなくもない。

古天樂/張翠山
無忌のパパ。せっかくの古天樂なのに出番が全然無い。

甄子丹/張三丰
武当派の掌門。まさかのドニー・イェンが演じる。原作よりも激情家っぽい感じ。残念ながら後半では殆ど出番がない。

文詠珊/趙敏
メインヒロインその1。無忌との恋愛エピは一応一通り抑えてある。2019年版倚天のようないいドラマを見た後だと、原作通りやられても可もなく不可もなく、といったとこか。

邱意濃/周芷若
メインヒロインその2。猫顔。ダーク化してデコ出しになった方が綺麗に見える。あからさまに小悪魔女してて好き。ラストバトルでは、修行期間が短かったとはいえ九陰真経が少林寺七十二絶技以下の扱い。悲しい。

云千千/小昭
メインヒロインその3。ビジュアルもキャラも93年版を意識してる感じ。原作の殷離役も兼ねており出番多め。

徐錦江/謝遜
明教幹部。無忌の義父でもある。色々説明必要なところがすっ飛ばされてるので原作を知らない人が見たらわけがわからないと思われ。

方中信/楊逍
明教幹部。殷天正・韋一笑と三人コンビで活躍。せっかくの方中信なのにアクションの見せ場があまりない。

駱應鈞/殷天正
明教幹部。光明頂でのバトルがピーク。以後は画面にうつるけどあんまり戦わない。

黃浩然/韋一笑
明教幹部。別名青コウモリ。物凄い髪型をしている。無忌のお付きとしてアクションでは一番出番がある。

郭政鴻/范遙
明教幹部。スパイとして趙敏配下にいた。万安寺で活躍した後は他のメンツに紛れてしまい目立たず。

陳紫函/黛綺絲
もと明教幹部にしてペルシャ総教に仕える身。終盤は聖火令を無忌のもとへ届けて成崑討伐をアシスト…ってわざわざペルシャから駆けつけてきたの?しんど…。

朱晨麗/殷素素
無忌の母。原作と亡くなる経緯が違う。

梁琤/滅絕師太
蛾眉派掌門。過激な尼さん。周芷若に呪いの遺言をするのは原作通り。

黃栢文/宋遠橋 耿長軍/俞蓮舟 黃竣鋒/俞岱巖 徐偉棟/張松溪 何浩文/殷梨亭 洪卓立/莫聲谷
武当派の長老達。通称武当七侠。ワラワラ出てくるが原作にあった出番をことごとく奪われており影が薄い。

劉浩龍/宋青書
武当派の高弟。一門を裏切った後、周芷若にゴミのように扱われあっさり死亡。

釋延能 成崑(即圓真)
謝遜の師匠。蒙古と中原武林の間で暗躍する。本作のラスボス。少林寺七十二絶技と、屠龍刀・倚天剣の両方を手に入れ無忌の前に立ちはだかる。ファンサービスの一環なのか、王昌監督ってこういう奥義のコンボ大好きだよね。自信満々に会得した奥義が見事に敗北フラグな硬功系なのもお約束か。

丁一森/鹿杖客 喻亢/鶴筆翁
趙敏配下の達人。通称「玄冥二老」。原作では終盤まで無忌の前に立ちはだかるが今作では万安寺であっさり戦死。もったいない。

樊少皇/阿狗(玉面劍神南宮野)
趙敏配下の達人。倚天剣を操り無忌へ挑む。演じるは2019年版「倚天屠龍記」で成崑を演じた樊少皇さん。