散りゆく花

サイレント映画の古典的名作。監督はグリフィス。主演はリリアン・ギッシュ。
中国映画じゃないんだけど、当時の西洋から見た中国観を知れる作品なので紹介。

ものがたり
仏教を広めるため海外へやってきた中国青年のチェン。しかし厳しい現実の前に夢破れ、スラム街で堕落した暮らしを送る日々。ある日、同じくスラム街に住み、父親から虐待されている少女ルーシーと出会い、チェンは彼女を保護する。ひとときの安らぎは長く続かず、ルーシーを探しにやってきた父親は彼女を痛めつけ、死に至らしめてしまう。それを目にしたチェンは…。

原題は「Broken Blossoms or The Yellow Man and the Girl」。イエローマンという言葉が時代をよく象徴している。
バーセルメス演じるチェンが妙に細目を作っていたり、背を曲げて顔を突き出した姿勢をとっていたり、ビジュアルは当時の西洋人から見た典型的中国人を意識している模様。仏教徒なら僧でないといけないはずだけどそこらへんまでわかっておけというのはまあ無理な話。一方で、その中国人を悪人側では無く善人側として扱っているのが特徴でもある。

往年の名女優であるギッシュがひたすら美しい。サイレントの女性は本当に時代を超える美しさや魅力があって不思議だ。演技も素晴らしく、台詞が無くても彼女の孤独や弱さが痛いほど伝わってくる。自然に笑えなくなってしまい、二本の指で無理矢理唇の端を持ち上げる仕草がとにかく哀れ。後半の中国服に着替えた姿はとてもエキゾチックな雰囲気を放っている。美しい西洋少女とシノワズリ(この時代にはもう死語かな…)の組み合わせはめちゃくちゃ芸術味と美しさを感じさせる一方で、妙にマッチしないグロテスクさがある。なんというか、この時代には許されていない組み合わせというか。うまく言葉になんないんだけど。だからこそ、ただでさえ外国人嫌いなルーシーの父親には、娘のこんな姿はさぞ唾棄すべきものとして見えたのではないか。
とことん救われない物語もとにかく良し。サイレントはやっぱりこれくらいシンプルな筋立てがいい。

パブリックドメインなので動画サイトで気軽に見ることが出来る。お勧め。