1977年の古装映画。中国古典四大名著の一つ「紅楼夢」を映画化。ショウブラザーズ制作。監督は歴史劇を撮らせたら右に出る者はいない李翰祥。
原作から宝黛釵の恋愛エピソードのみを抽出している。これは時間に制約がある戯曲や映画などで古くから用いられている手法の一つ(紅楼夢はただでさえ話が長く、脇のエピソードも多いので)。というわけで紅楼夢初心者にもわかりやすい内容となっている。色々省いた分、十二釵の大半が出てこないのは致し方なし。
タイトルの金玉良縁がちょっと謎。宝玉と黛玉を主軸に考えるなら木石良縁の方がよくないか。字面的に華が無いかもしれないけど。
宝黛釵の出会い、葬花、慧紫鵑など、重要なエピソードはきちんと抑えられていてどれも完成度高し。一部改編として、慧紫鵑の流れから宝玉の病気を祓うため宝釵と結婚させる流れになっている。これはこれでなかなかいい繋ぎ方。キャストも衣装もセットも素晴らしい。古典名著の映像化だけあって気合いを感じる。この時期の古装ものなので、人物がみんな突然歌い出すのが気になる人には気になるかも。特に後半はほぼ歌いっぱなし。
紅楼夢映像作品の中でも良い部類に入ると思う。紅迷はとりあえず見るべし。
以下キャスト
林青霞/贾宝玉
賈家の変人公子。登場シーンからエキセントリック全開。演じるはあの名女優・林青霞。女性が宝玉を演じるのは結構多いパターン。
张艾嘉/林黛玉
ヒロイン。涙の似合う顔立ちで雰囲気は出ている。とはいえ黛玉についてはもっと神なキャスティングが幾つもあるので、张艾嘉も悪くは無いけど…くらいのレベルかな。宝釵には軽口を言いながらも最初から良好な関係。物語も整理されていて黛玉の心情がわかりやすくなっている。どうでもいいけど臨終のシーン、長椅子じゃ無くてもっと寝やすいとこで休ませてあげなよ…って思った。
米雪/薛宝钗
お姉様の風格漂う宝釵。ちょっと説教くさくて宝玉と心の距離があるのは原作通り。かなりはまっている。米雪さんは1977年の香港ドラマ版でも宝釵を演じている。もうちょっと出番多くても良かったかも? 慧紫鵑の後出番が少なくて、やむを得ず政略婚に加担する宝釵の心情も描いてほしかったところ。
狄波拉/紫鹃
黛玉の侍女。滅茶苦茶かわいい。後半も出番多くて黛玉よりも紫鵑ばっかり見てしまった。独唱場面も多いほか、黛玉死後に宝玉の裏切りを非難する場面まで出てくるなど脇キャラにしては破格の扱い。調べてみたところ、もとは演者の狄波拉さんが薛宝釵候補だった(それも監督の李翰祥推し)のを、本人が紫鵑役を希望したのだとか。そんなわけで沢山出してあげたかった、ということらしい。でも確かに宝釵より紫鵑の方が合ってると思う。ナイス。
胡锦/王熙凤
賈家の若嫁。王夫人と組んで宝釵を宝玉の嫁にしようとする。原作のエピをことごとく削られているのでただの悪い女にしか見えない。
欧阳莎菲/王夫人
宝玉の母。見た目だけは優しそう。原作のエピをことごとく削られているので(ry
祝菁/袭人
宝玉の侍女。つり目でちょっと表情がきつい。原作の(ry
宝玉に「あそこにいるのは誰?(宝玉は黛玉と結婚すると思っていたのに宝釵がいた)」と聞かれた時の「何言ってるんです。あなたの奥様ですよ(ごまかし笑顔)」がイラつく。
王莱/贾母
賈家のグレートマザー。映像化されるといつもふくよかなビジュアルなので、本作のほっそりした賈母は珍しいかも?
郭佑华/蒋玉菡
役者にして宝玉の友人。賈政のお仕置きシーンにうまくつなげるための出演。
尤翠玲/晴雯
宝玉の侍女。黛玉へハンカチを届けたり、扉を閉めて黛玉を追い返したり、原作通りなんだけど存在感をあまり感じられないエピしか出てこない。
惠英红/麝月
宝玉の侍女。演じるは往年のアクション名優さん。よく見ないと出番がわからない。
姜南/焦大
賈家に古くから仕える使用人。映画は彼の独白から始まる。