天命の王妃

天命の王妃 占者は未来を描く【電子書籍】[ 日高砂羽 ]

価格:539円
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コバルト文庫より2009から2012年まで刊行された中華風小説。全八巻。作者は日高砂羽。
今回、創作の参考のため再読し、せっかくなのでレビューを書くことにしました。

ものがたり
石占いを生業とする明霞は、ふと出会った皇族の青年・無憂を占い、彼が一ヶ月後に死ぬことを予言してしまう。率直な物言いを気に入られ王府へ迎えられた彼女は、無憂と共に様々な事件へ巻き込まれていき、少しずつ愛を育んでいくが…。

なんといっても主人公の明霞(とその従兄)が持つ「無極の徒」の設定が素晴らしい。単なる占いだけでなく、石に気を込めることで火や水を呼び出し、戦闘までこなせるというおいしい能力。占い場面も陰陽や八卦など中華テイストたっぷりに描写されていて雰囲気がよく出ている。作中では、こうした力を悪用するキャラも存在し、いかに力を使うか、といった明霞の葛藤もよく描かれていたと思う。
反面、ストーリーの方は巻を追うごとに盛り下がり気味。特に明霞と無憂の恋愛関係については、一巻の時点でほぼ大きな峠を越えてしまい、続刊で恋のライバルが出てきたり、二人の仲を裂く事件が起きてもあんまりハラハラ感が出なくなってしまっている。明霞に変な意地を出させて無憂との結婚を先延ばしにする展開も、引き延ばしにしか見えないのがちょっとね…。
後半になると国家同士の戦いや、無極の徒の力を悪用する組織などに話がシフトしていき、かなり持ち直している。設定が秀逸な作品だったので、最初からこっちの路線でいった方がずっと面白くなったかもしれない。

主要登場人物
明霞
主人公。もとは売れない占い師。理由は客へズバズバものを言ってしまうから…だそうだが最後まで改善された様子はない。重要人物を占うと大抵とんでもない卦が出てしまうのは本作のお約束であり笑いどころ。少女小説の主人公らしく、役にも立たないのにあっちこっちへ首を突っ込んでは危険な目に遭う。わかりやすい守られ系ヒロイン。人によってはかなりイライラするかもしれない。自分も少女小説書くのでよくわかるんだけど、守られキャラって、ほんとにただ守られてるだけじゃダメなんだよね。かといってイニシアチブとろうとすると、読者的には「何も出来ないのになぜ出しゃばる!」となるから本当に加減が難しい。
無憂に対してはよくわからない意地を張ったり、本人の初な性格もあってなかなか発展しない。

無憂
本作の王子キャラ。王府の皇族。かつて国のために自らの父を殺した過去を持つ。よく明霞にセクハラ紛いの絡みをしかけるがイケメンなのでお咎め無し。明霞一筋でぶれないのはいいんだけど、そのせいで早くから関係が安定してしまい、あんまり二人の恋愛話にはハラハラ感が無い。


明霞の従兄で医者。無憂とは過去の事件で深く関わっており、遠慮なく話せる仲。シスコン。明霞よりも力を使いこなしているほか、素の武力もかなりのもの。後半は不本意ながらも無憂のために力を使って人殺しをするのだけれど、むしろ明霞にこの役割を担わせた方が良かったかな~と思う。

凌波
皇后の姪。武術が得意なお転婆公主。当初は恋のライバルキャラとして登場したが、耿の方へぞっこんになった(耿は迷惑がってるけど)。後半は思いっきり影が薄くなる。