狐村滞在記

よくこのブログで紹介している、ひつじ書房さんの「中国現代文学」シリーズの短編作品。
僻地の診療所を舞台としたホラー小説。
感想を書くのにネタバレが避けられないので、先に読んでおきたい方はバックしてください。

【中古】中国現代文学 21 /ひつじ書房/中国現代文学翻訳会(単行本(ソフトカバー))

価格:1,302円
(2023/3/7 00:28時点)
感想(0件)

ものがたり
李小琳の現代ホラー小説。二万元の報酬につられて、人里離れた狐村の診療所へやってきた若き女医・小杜。ところが、その診療所は薬の処方といい治療の仕方といい、小杜がつとめていた病院とはどこか違っていた。慣れない田舎暮らしと、診療所をとりまく癖の強い人物達。小杜の違和感は次第に大きくなり、やがて診療所の恐るべき実態を目にする…。

以下、ネタバレ感想

診療所の裏では若い肉体を解剖して臓器売買らしきものが行われていた…というオチ。一応、田舎暮らしに疲弊して疑心暗鬼になった主人公の妄想、という可能性もあるけど。
人肉とか臓器提供とか、現代でもこういう話にリアリティを出せるのは凄い。まあ、実際それらが中国社会で本当に横行しているかは別として…。
中国の田舎って、日本と比較してもホラーな雰囲気を作れる未開の場所が沢山ある気がする。都市部を離れたら滅茶苦茶交通の不便なところはまだ多いし。ちなみに、本編の舞台になっている狐村は架空の村だそうな。
窮地に陥っても金への執着は捨てきれない小杜(こういう逞しいところ好き)、三輪タクシーとの値切り交渉、都会と田舎の落差、こういうあたりの描写も今時の中国小説ならでは。

以前紹介した「明光書店奮闘記」も含め、この中国現代文学21巻は良作揃いなのでとてもお勧め。