四世同堂

四世同堂。祖父から孫の世代までが同居している家族を示す言葉。上から見ればひ孫、下から見れば曾祖父までが一緒にいることになる。老舎の同名小説が有名なので、中国好きならそちらでこのワードを聞いたことのある人も多いかも。
日本人の家族スケール感だといまいちイメージしにくいかもしれないが、とくに旧時代の大家庭の場合は、祖父・父世代の夫婦が二つ三ついることもザラで、全員合わせると二十人近くが一つの家で暮らしていたりする(当然、このレベルの家には使用人も多数働いているため、それらも含めればもっと増える)。

四世同堂は幸福な家庭の象徴として用いられる。実際、大家庭を舞台としたドラマや小説では、四世代がそろっていることも少なくない。大勢の家族を養える経済力、老人が長生きできる平穏な環境が整っているわけで、確かに裕福なことは間違いない。けれども、幸せという点では必ずしもそうではないと思う。
家族の中で、四世同堂の幸せを一番享受できるのは誰だろうか。言うまでもなく家長である。自分は家庭の責任をもう終えて、あとはのんびり繁栄を見届ける立場、面倒ごとは基本的に下の世代が引き受けてくれる。そして自分は最高権力者として振る舞えるので、ともすれば老害化してしまうケースも少なくない(旧時代の場合、儒教の孝の教えもあって下の世代は基本的に誰も逆らえない)。
それより下になると、財産の相続だとか、稼ぎや学力の差だとか、結婚してさらに下の跡継ぎがいるとか、家庭内の問題でどうしても争いが生じる。先ほども述べたが、大家庭の祖父・父世代なんかは夫婦が三つくらい並ぶことがある。でも家督を継げるのはその中の一つだけ。となればどうしても同世代同士で諍いが生じやすい。また近代になると、巴金の「家」がいい例だが、先進的な教育とか外国文化の流入による世代間闘争なんかも加わってくる。そんなわけで、四世同堂の象徴する幸福というのはあくまで外面の繁栄で、中身はドロドロなイメージが強い。

ちなみに四代同堂という言葉もあるらしい。四世同堂は直系で男性四代がそろっている場合を示し、四代同堂は男女関係なく四世代がそろっていればそう呼ぶとのこと。ん?ということは「紅楼夢」の賈家も四世代いるけれど、最長老の史太君は女性だから四世同堂ではないのかな? 調べてみてもあまりはっきりした区別がわからなかったので、詳しい方がいらっしゃったら是非ご教示ください。

まあ何が言いたいかっていうと、大家庭はやっぱり大変、ってコト(ちいかわ並感)。