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唐の詩人・柳宗元の短編作品。彼の文集「柳河東集」に収録されている。
お話は河間という貞淑な夫人が、ちょっとしたきっかけで淫婦に堕落してしまうまでを描く。唐代伝奇らしくシンプルな内容で、特に捻りもない。妻に裏切られても死に際まで「妻に申し訳ない!」と叫んでるMな夫が面白いくらいか。
柳宗元が何故このような話を書いたのかは諸説ある。唐代伝奇の多くは、貴族や文人など限られた層で流通していた文化ゆえ、モデルとなった人物が作者の身近に存在したり、内容もゴシップみたいなネタが目立つ。恐らく本作もその例に近いのでは無かろうか。河間についても、わざわざ作中で「姓は言いたくない」と書いており、これこそモデルが実在して身バレを恐れた証拠だと思う。柳宗元にとってもこの話にはなかなか苦々しい気持ちがあったようだ。ラストのコメント「愛情は信用できない! 君臣の間は尚更だ!」というのはちょっと話が飛躍しすぎな気もするけど。
小説冒頭の一文「河間。淫婦人也」はインパクト絶大で、現代の我々でも見習いたくなるような小説の書き出し。否が応でも続きが読みたくなってしまう。現代人にとっては、形式重視でもったいぶった始まり方をする明清の通俗小説より、こういうストレートな書き方をした唐代伝奇の方が読みやすいかも。
詩人として有名な柳宗元だが、小説や散文でも色々な作品を残しているので、気になる方はチェックしてみては。