星連集

中国文学サークル「文人墨客同盟燦然星会」による作品集。泥舟処士による短編・中編小説と、子廬主人による詩や切り絵が収録されている。

小説はいずれも中国古典をモチーフに様々なジャンルの作品を掲載。才子佳人に武侠もの、さらには古典を現代小説へ翻案したものもあり、かなりバラエティ豊か。文体もガチガチの説話小説風、通常の三人称、一人称と作品ごとに書き分けられており、続けて読んでも読者を飽きさせない心遣いと、作者の技量が感じられる。引っ張ってきている元ネタ自体は有名どころばかりなので、少し中国古典文学をかじった方ならすぐにわかるはず。ちなみにどの作品も女体化・ロリ全開なのには少々笑ってしまった。

以下、各作品で面白かったものを簡単に紹介

・酔仙楼詩話

才子佳人もの。ストーリーは王道を行きつつ、ところどころ捻りがきいいていて面白い。まんま説話小説ガチガチな地の文(ちゃんと定場詩と収場詩が入ってる。凄いこだわり)に反し、仙人達の言語が現代語バリバリなのも、かえってそれらしさが出ていていい感じ。

・可憐飛燕倚新粧

有名な楊貴妃と張飛の笑話が元ネタ。あっさりし過ぎている原作をうまい具合にアレンジしている。fei繋がりで趙飛燕を持ってきたのは素晴らしいアイディアだと思った。ラストのオチも面白い。蛇矛(笑)

・「なれるものなら」「オレたち一心同体」

普通の現代小説家と思いきや、なんと元ネタは陶淵明。なるほど、こういうやり方もありだ!と唸らされた作品。

・剣仙聶隠娘

これまた有名な唐代伝奇の一編をリメイクした中編小説。原作では殆ど感情が表現されていなかった聶隠娘の視点で物語が語られている。後半は原作を離れたオリジナル展開が始まり、かなりダークなお話になっていく。第一部だそうなので、是非二部以降にも期待。武侠小説・神魔小説の決まりごとを丁寧に盛り込んであるので、ファンならにやりとせずにいられない。

後半には子廬主人の詩書画印を掲載。あー、中国好きなのに自分ってこういう中国文人らしい趣味を磨いてないなあと後悔。昔切り絵少しやってたけど途中で力尽きちゃったし。色々勉強させていただいた。

元ネタがメジャーどころばかりなので、中国古典小説初心者でも存分に楽しめる作品。是非手に取ってご覧あれ。