金庸徹底考察 主人公編 「射鵰英雄伝」より郭靖

【中古】 射雕英雄伝(5) サマルカンドの攻防 徳間文庫/金庸(著者),金海南(訳者),岡崎由美 【中古】afb

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(2022/1/30 11:31時点)
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紹介順番が順番が張無忌、楊過と逆になってしまいましたが射鵰英雄伝の主人公・郭靖についての考察記事です。純朴、厚い義侠心など金庸小説ではオーソドックスなタイプの主人公。

劇中の活躍
射鵰英雄伝
梁山泊の末裔・郭嘯天の息子。しかし父は金と通じた宋の悪徳武官・段天徳によって殺される。逃げ延びた母親の李萍はモンゴルで郭靖を産み、仇討ちのため彼を育て上げていく。やがて砂漠にやってきた江南七怪に師事し、また全真教主・馬鈺の助けで武術の腕を磨く。チンギスハーンのモンゴル統一と同時に、成長した郭靖は仇討ちのため中国へ。途中の燕京府で、父の義兄弟であった楊鉄心の息子・楊康と運命の出会いを果たす。二人は江南七怪と丘処機の約束のもと、生前から戦う運命にあった。しかし楊康は実の父親を知らず、母を拉致した金の皇族・完顔洪烈によって育てられており、郭靖と敵対。危機に陥った彼を助けてくれたのは黄薬師の娘・黄蓉だった。二人は意気投合し、四大武術家・洪七公との出会い、梅超風や欧陽克との対決、桃花島での嫁取り合戦など、数々の冒険と危機を乗り越えていく。その中で、郭靖は偶然にも伝説の武術奥義書である「九陰真経」を入手。そのために、四大武術家の一人である欧陽鋒から執拗に付け狙われてしまう。また、完顔洪烈が宋侵略のために捜索していた岳飛の兵書を奪い取り、その陰謀を阻止した。
雲南の冒険の後、師匠の江南七怪が桃花島で惨殺されてしまう。郭靖は黄薬師の仕業と思い込み煙雨楼で大勢の英雄達と共に決戦を繰り広げるが、真犯人は欧陽鋒と楊康だった。全ての誤解が解けた時、黄蓉は欧陽鋒に連れ去られてしまう。彼女を探すうち蒙古までやってきた郭靖は、チンギスハーンの遠征に参加することに。岳飛の兵書を用いて手柄を次々にあげたが、金とサマルカンドを滅ぼしたチンギスハーンの次なる標的は宋だった。祖国を裏切れない郭靖は密かにモンゴルから逃げ出そうとするが、その途中で母を殺される。自分が武術をどれだけ学んでも人を傷つけるばかりだと思い悩む郭靖。しかし、丘処機のすすめで華山論剣に参加し、洪七公の言葉に希望を見出す。黄蓉とも再会し、ようやく黄薬師にも結婚を許される。やがて、チンギスハーンによる宋の攻撃が始まると、郭靖は襄陽を守り抜く。その後、老齢で余命幾ばくも無いチンギスハーンと再会した郭靖は、民を守ってこそ真の英雄であるとチンギスハーンを諭すのだった。

神鵰剣侠
前作から十年。立派な中年侠客に成長した郭靖。横死した義兄弟の忘れ形見、楊過と江南で出会う。孤児になった彼を哀れみ、自らのもとで育てようとするがうまくいかず、全真教へ預ける。しかし、楊過はほどなく全真教を抜けて古墓派へ鞍替え。モンゴルの宋攻撃に備えて英雄宴を開いた郭靖は、世間のルールを平気で破る楊過に辟易しながらも、なお息子同然に彼を慈しむ。しかし、楊康の殺された経緯について濁し続けたことと様々な誤解が重なり、仇と狙われる羽目に。それでも、モンゴル軍の襄楊攻撃の中、郭靖が必死に楊過を守り抜いたことで両者は和解。共に襄陽の防備につとめるが、そのさなかバカ娘の郭芙が楊過の右腕を切り落としたため、以降は十六年間再会することはなかった。
十六年後、モンゴルが大軍を組織して南下。郭靖は楊過や豪傑達と協力してこれを打ち破る。その後、華山で五絶の一人「北侠」と認められるのだった。

倚天屠龍記
直接の登場は無いが、モンゴル軍との戦い抜き襄陽で妻・黄蓉と共に戦死したことが語られる。しかし、宋再興のために屠龍刀・倚天剣を作り、その中にある秘密を託していた。

人物
義侠心に溢れる真面目な純朴青年。そしてバカ。
作中では、このバカという特徴がよくも悪くも働いている。
よい方向としては、裏表がない正直な人柄なので、誰からも好かれる点。ひねくれたヒロインの黄蓉をはじめ、潔癖で他人に厳しい全真七子や、世間から蔑まれている丐幇、天真爛漫な周伯通など、郭靖の人格を認めているキャラは多い。その正直ぶりは敵にも信頼されるほど。
一方で、この性格は悪い方向へも大きく作用する。その最もたる例が、黄蓉とコジンの間で板挟みにあった時だろう。バカなんだから素直に「俺はただ黄蓉と一緒にいたい!」とでも言っておけばいいところを「コジンと先に約束したから彼女と結婚します」と、本心よりも建前の信義を優先したあたりは本当にどうしようもない。言われた側の黄蓉からすればあんまりだ。
他にも、大悪人であり師匠の仇でもある欧陽鋒を「約束したから」と何度も見逃す、「武術で人を殺すのはよくないから」と崋山で丘処機に加勢しない、などなど似たようなケースは結構出てくる。どれもこれも「約束だから」「世間の決まりだから」「正義だから」と表面的な理屈をこねるだけなので、決して物事の本質やその時の状況を深く考えたうえでの発言・行動とは感じられず、言っちゃ悪いけれど本物のバカだと思う。
そして生憎、中年以降もこういう部分はあんまり直ってない。むしろ年季がいった分、思考が硬直して悪化している節すらある。作中でも公然と「え? 大義のためなら親兄弟だってぶっ殺すけど?」と素で言えちゃったりするし(目の前で聞いてたフビライや金輪法王はどん引きしてた)、デリケートな思考の楊過に対しても「師匠に逆らうのはいけない」「世間の決まりは守らなきゃいけない」の一本調子だから話が噛み合わない。もちろん、平常は民をいたわり弱い者のために戦えるストレートな英雄であるのは間違いないんだけれど、善悪の揺れ動きがよくテーマになる金庸作品だと、郭靖の単純化された正義は読んでいてちょっと気になってしまう。まあ、ここらへんは師匠の江南七怪や全真教あたりの影響とも取れるけれど…。
また神雕では優れた武術家、軍人としての見せ場が増えたものの、上述の楊過への対応以外にも、娘の教育に失敗していたり(これは甘やかした黄蓉にも責任はあるけど)、弟子達のモラルの低さといい、人格面ではマイナスな部分が目立って損をしている。特に七公が傷心の楊過をあっさり慰めてしまったくだりとかを見ると、教師としてのレベル差が露骨に出てしまったような。
郭靖がキャラとして輝くのは彼単体ではなく、やはり黄蓉の存在あってこそ。上述した諸々の欠点についても、いつも黄蓉が読者に先んじて突っ込んでくれるし、郭靖に出来ないことは彼女が代わりにやってくれる。逆に黄蓉が行き過ぎそうになると、郭靖がそれをうまく抑えてくれる。この絶妙なバランスが素晴らしい。金庸作品のベストカップルは、やはり郭靖と黄蓉だと思う。

武功
鈍くて覚えが悪く武術の才能は限りなく低いと思われていた。しかしそこはいつもの金庸マジック。上達の難しい武功をうまい具合に習得していき、気がつけば作中でも強キャラの一角に。しかしながら、射雕の時点では周りの達人が強すぎたので、最強クラスには到達していなかった。続編の神雕では修行を積んだおかげで中原最高峰の使い手に。が、十六年後の舞台では、長らく襄陽の防衛についていたので、武芸の方はそこまで伸びていなかった模様。
射雕英雄伝の終盤からは岳飛の遺書を用い、兵法にも通じる。でも神鵰では戦場でも個人の武勇による見せ場が多く、あんまり軍師的な活躍は少なかったり。

江南七怪武功…最初の師匠、江南七怪に習った武術。郭靖本人の素質不足もあってか、最後まで満足に修得出来なかった武術も存在する(朱総の盗み技とか)。以下詳細を記す。
降魔杖法…柯鎮悪より習う。燕京で楊康と戦った際に使用。発展型である伏魔杖法は未修得の模様。
分筋錯骨法…朱総より習う。砂漠で尹志平と戦った際に使用。郭靖が未熟だったこともあり、決め手にはならず。
南山掌法…南希仁より習う。郭靖初期の拳法だが、強敵と渡り合うには不十分だった。降龍十八掌修得後はそちらに出番を譲る。
越女剣…韓小瑩より習う。中年以降、弟子達に伝授している。

弓術…モンゴルの将軍・ジェベより修得。特に器用さとかは要求されないので、七怪の武術と異なりスムーズに技量をあげていった。いや、もしくは単に七怪が指導下手だった可能性も…笑 中年以降もその腕はますます高まり、金輪法王とは矢の撃ち合いで圧倒した。

モンゴル相撲…モンゴルで子供の頃から身につけていた。思いがけないところで役に立つ。

全真教内功…全真教主・馬鈺より習う。道家の正純な内功。本来は雑念を取り払い、長年かけて鍛えていかねばならないが、おバカな郭靖は雑念が少なかったので修行がよく進み、二年で江南七怪をしのぐ内功を得た。降龍十八掌をスムーズに修得出来たのもこの内功によるところが大きく、郭靖の武芸を根本で支えている重要な武功。

降龍十八掌…洪七公より伝授。最初は十五掌のみ、後に弟子入りを許されて残りの三掌も習う。莫大な内力をこめた掌を用い、相手を一撃で葬る必殺武功。型はシンプルで小細工もいらずと、郭靖の性格とも相性がよかった。一手ごとに内力を大きく消耗するため、連続使用は危険。初期は十八掌を順番通りに繰り返すだけ、という頭の悪い戦い方しか出来なかったが、経験を積んで様々な工夫を織り交ぜ、中年以降は師匠の洪七公を上回る応用を見せることも。

空明拳…周伯通より遊び目的で伝授。内家武術の最高峰。全七十二手。しかし修行期間の浅さもあってか、作中では攪乱のためや、降龍十八掌で対応出来ない場合に使うのみで、それほどの活躍はない。

左右互縛術…右手と左手で別々の技を繰り出し、手数を二倍にする。このため、相手は実質二人の敵と戦うのと同じ…らしい。実際作中でもそんな都合のいい展開になっている場面は見当たらない。

九陰真経…様々な奇縁を経て手にいれる。が、その難しさゆえに郭靖自身では修行もままならず、常に洪七公をはじめとする超一流の達人の助力を必要とした。射鵰では危機に陥る度、九陰真経から何とか使えそうな武功を用いて窮地を脱出している。上下巻に分かれており、上巻の内功部分についてはかなり深いところまで修行したようだが、下巻の外功については作中でも殆ど使用しておらず、修行したのかも怪しいところがある。

弾指神通…神雕剣侠で初披露。桃花島に過ごした十年で修得。ただし使ったのは全真教戦のみで、あまり印象に残らない。初めて読んだ時は郭靖にも修得出来るような武術だったのか、と驚いた記憶がある。

人物関係
黄蓉…ヒロイン。彼女がいなかったら趙王府で間違いなく郭靖は死んでた。お転婆で常に郭靖をリードしているように見えるが、その実郭靖の意見を常に優先しており、滅茶苦茶甲斐甲斐しい子。中年以降は郭靖の影響が大きくなったのか、娘時代の個性は薄れすっかり封建主義的な賢妻タイプに。

楊康…一応、義兄弟。敵対する形で出会ってしまったこともあり、関係性はかなり最悪。一応、本編ではライバルキャラのはずなのだが腕前は中盤以降かなり差がついてしまった。関係悪化については、郭靖も楊康に対してデリカシーのない発言をかましたりする(育ての親だった完顔洪烈が仇だと判明した直後で戸惑う楊康に「俺と一緒にぶっ殺しに行こうぜ」なんて誘いをかけたりとか)ので楊康だけが悪いとはいえない。

穆念慈…楊鉄心の養女。サブヒロイン。郭靖は終始伯父の娘として接している。

洪七公…北丐。江南七怪に続く二番目の師匠。丐幇のボスにして作中最高峰の人格者。郭靖を武術・メンタル両面で深くサポート。どちらかといえば江南七怪(というか柯鎮悪)が度々弟子を振り回す行動をするので、七公はよくフォローにまわる。まあ七公も「死ぬ前に宮中料理が食べたい」とか弟子に無茶ぶりをしたりもするけれど。最初に武術を教えたのは黄蓉の料理につられたためでもあるが、同時に郭靖の人格を深く評価しており、そのために自ら弟子をとらない規則を破っている。神鵰では再会出来ず、射鵰のラストでで別れたきりになってしまった。

黄薬師…東邪。桃花島の主にして後の岳父。婿取り合戦では、郭靖があまりにバカなのにホイホイ課題をこなしていったので「もしやこいつ、実はバカの振りをした天才なのでは」と謎の誤解をした。その後も紆余曲折あったが、華山論剣でついに黄蓉との結婚を認める。神鵰では郭靖との絡みがなくて残念。

欧陽鋒…西毒。桃花島での婿取り合戦を機に敵対。郭靖が九陰真経を手に入れたため度々つけ狙う。射鵰の郭靖は最後までその強さに及ばなかったが、続編の神鵰では一対一で引き分けるほどになった。

一灯大師…南帝。傷を負った黄蓉の手当をしたほか、郭靖に九陰真経の不明だった梵語部分を解説。

周伯通…全真教主・王重陽の義弟。郭靖と義兄弟になり、九陰真経をこっそり教えた。老人と若者のやり取りはまるでコントのよう。黄薬師同様、神鵰ではまったく絡みがなくて残念。

柯鎮悪…江南七怪の筆頭。郭靖の最初の師匠。偏屈な正義漢。そのためしょっちゅう弟子を振り回し、挙げ句作中で郭靖を二度もぶっ殺そうとしたことがある。しかし郭靖は根に持たずその後も従順。神鵰でも、博打に負けて弟子の家に逃げ込むなど迷惑ぶりは健在。神鵰のラストまで生き延びた郭靖の正式な師匠は柯鎮悪のみだったりする。

朱総…二番師匠。郭靖に字を教えるのはとても大変だったんじゃなかろうか。それだけでも凄い。なんだかんだ黄蓉とのカップルをはやくから認めていた。

韓宝駆…三番師匠。馬の扱い、鞭法などを教える。短気ながら郭靖をとても可愛がっており、柯鎮悪が郭靖を殺す多数決をとった際も反対にまわった。

南希仁…四番師匠。無口。郭靖の性格をよく理解しており、一人で旅立たせる時は「敵わなかったら逃げろ」と的確なアドバイスを送る。桃花島の惨劇では、毒を浴びながらも生きていたため、郭靖に仇を教えようとするが、そのせいで誤解を与えてしまう。

張阿生…五番師匠。しかし郭靖を弟子にとった直前の黒風双殺との戦いで死亡してしまう。怠けるな、と命を引き代えに教訓を残す。

全金発…六番師匠。商売人気質で、郭靖がコジンではなく黄蓉を好きと知った時に折衷案を出した。

韓小瑩…七番師匠。郭靖にとっては第二の母。いつも郭靖を庇う優しい存在。

丘処機…全真教長老格。過激な正義の味方。郭靖の名づけ親でもある。勝手に郭靖を個人的な決闘の道具にしたり、無理矢理念慈と結婚させようとしたり、物凄く迷惑。しかし郭靖は名づけ親で父の友人ということもあってか、常に尊敬の念を持って接している。

馬鈺…全真教の二代目教主。郭靖に内功を教える。それまで修行に伸び悩んでいた郭靖のコンプレックスを解消してくれたこともあり、彼が全真教武功をリスペクトしているのも馬鈺との経験が大きいのでは。

王処一…全真教長老格。趙王府で郭靖を助ける。身内には厳しいが、郭靖に対してはその捨て身の義侠心を見たこともあり終始好意的。

梅超風…黄薬師の弟子にして射鵰での中ボス。彼女の夫・陳玄風を偶然殺してしまったため仇とつけ狙われる。

欧陽克…欧陽鋒の息子。黄蓉をめぐって度々対決。郭靖が急激に腕をあげていったため、桃花島で対峙した時点では既に敵わなくなっていた。

チンギスハーン…モンゴルの王。戦功をあげた郭靖を婿として迎え入れ、また自分に物怖じせず意見をする人間として認めている。

トゥルイ…モンゴルの王子にして郭靖の義兄弟。同年代で一番気の合う存在だったのでは。トゥルイが若年で亡くなったため、二人は義兄弟の誓いをまっとうすることが出来た。

コジン…モンゴルの姫で婚約者。完全な当て馬。郭靖は最初から妹のようにしか思っていなかった。

段天徳…腐敗した宋の武官。父である郭嘯天を殺害した張本人。しかし裏で手を引いていたのが完顔洪烈だったため、郭靖は彼を仇として狙うことに。

完顔洪烈…父の仇。サマルカンドでモンゴル軍に参加していたが、郭靖に攻略されて捕まる。

楊過…甥。郭靖は名づけ親でもある。孤児だったところをせっかく桃花島へ連れ帰ったのに黄蓉の思惑もあってきちんと面倒を見れず、楊康の死んだ経緯についてちゃんと説明出来ず、挙げ句送った更正施設が腐敗気味な全真教と、色々やることが裏目に出てしまった。楊過が結局世間の決まりを破って小龍女を妻にしてしまったことを、どう思っていたのかが気になる。

郭芙…長女。両親の欠点を見事にブレンド。郭靖は厳しくしつけていたがまったく駄目だった。

郭襄…次女。長女の失敗を考えてか厳しくしつけたので割といい子に育つ。が、偏屈な祖父の気性を受け継いでいたのでやっぱり郭靖を悩ませている。

郭破虜…長男。描写が少なくてなんとも言えず。屠龍刀を受け継いでいたので、恐らく郭靖から兵法を伝授されていたと思われる。

武兄弟…直弟子。武術は微妙な腕前。人格的にも未熟で、郭靖の教育力の低さを感じる。

耶律斉…娘婿。丐幇を継いだので、恐らく降龍十八掌も伝授したはず。

金輪法王…モンゴルの国師。英雄宴や襄陽戦などで、何度か手を交える。十六年後以前だと、一対一ならば郭靖に分のありそうな描写になっている。

金庸考察 失伝!九陰真経の謎!

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射鵰三部作を通して登場する武術の最高奥義「九陰真経」。しかし、三部作目の倚天屠龍記では長らく江湖で失われた状態だった。
倚天において、謝遜は失伝の理由を「九陰真経は修行が大変難しく、郭靖の娘・郭襄でも修得できなかったほどだから」と語っている。
これがいまいちひっかかる。前作から百年近くが経過しているので、恐らく謝遜の言葉にも憶測が含まれていたとは思うが、神鵰時代に九陰真経の継承者は本当に一人も存在しなかったのだろうか。当時の襄陽には武林の達人が集い、郭靖の周辺には自分の弟子も含め、高度な奥義を身につけられそうな人材が少なからずいたのでは?
ということで、九陰真経の奥義が伝えられなかった原因について、ちょっと考察してみたい。

まず、郭靖の周辺――つまり子供や弟子達――で九陰真経を修得出来る人材がいたかを確認してみよう。

郭芙…郭家長女。神鵰十六年後の時点で、二三流どころの武術レベル。よって素質なしとする。
武兄弟…郭靖の弟子。神鵰十六年後の時点で、一流クラスの使い手には成長している、と言及あり。しかしながら、二人以上の実力を持つ耶律斉がモンゴル食客軍団より腕前が落ちる点を考えると、一流といっても下位クラスの分類になると思われる。
郭襄…郭家次女。神鵰十六年後の時点では、江湖を一人でうろつくのが危険なレベルの腕前。数年後の倚天屠龍記序盤では、少林寺の達人・無色大師を翻弄してみせたものの、実戦の経験はまだ浅く達人には遠く及ばない。ただし、様々な武術家の技を使い分ける、覚遠の九陽真経の奥義を横で聞き取るだけで多くを悟るなど、後の蛾眉派開祖として才能の片鱗は見せている。
郭破虜…郭家長男。武術の腕前について殆ど言及がないので不明。
耶律斉…郭靖の娘婿にして丐幇幇主。全真教・周伯通の直弟子でもある。上述した通りクドゥや尼摩星に及ばないが腕は一流。

さて、この中で最も適正がありそうなのはやはり耶律斉である。まず全真教の弟子なので、道家の正当な内功を修得している。これは同じく道家を基礎とする九陰真経と相性がいいはずだ。何より耶律斉自身の素質も高い。
次点で武兄弟も十六年後のレベルなら何とかいけそうな感じはする。一陽指もちゃんと会得しているようだし。
郭襄は素質はあるものの、楊過への断ち切れない未練など雑念があって、倚天の時点でも修行はまだ危ないかもしれない。

というわけで、九陰真経を学べそうな人材は身内だけでもそこそこいたわけである。だが、郭靖は神鵰十六年後の時点で誰にも奥義を伝えている様子がない。となると、問題は人材ではなくそれ以外の外的な要因によるものと考えられる。以下、考えられそうなものをあげてみよう。

①郭靖の指導力が無かった。
これは神鵰序盤の時点で、まだガキンチョだった楊過に指摘されている。郭靖は教えるのが下手なのだ。本人にも自覚があったかもしれない。安全な全真教や江南七怪の技はまだしも、九陰真経となると教えるのに危険が大きすぎる、と。
現実にもあることだけれど、指導する側の立場になると、生徒を危ない目に遭わせてはいけない、誤った答えを与えてはいけないとセーブする心理が働いてしまう。これは物事を深く理解すればするほど起きやすい現象でもある。まして教えるのは武術、人や己を傷つける可能性がある。慎重になってしまうのも当たり前だ。
また、九陰真経が修得難度の高い奥義書であることも事実である。射鵰で郭靖が九陰真経を学ぶ側だった時は、常に四大武術家をはじめとする超一流達人のアシストが不可欠だった。指導無し、あるいは上下巻のどちらかが欠けていた場合、梅超風のような邪道に陥ってしまうケースも目にしている。他にも射鵰時代は、牛家村での内功治療、丐幇大会での移魂大法など、状況的にどうしようもなくなって九陰真経の技を頼る局面が多かったが、強力な技はコントロールにもリスクがつきもの。よくよく考えたら失敗する可能性もあったわけで(特に移魂大法なんてほぼぶっつけ本番の使用)、奥義の扱い方としては結構危ない橋を渡っている。結果的にうまくいったから良かったけれど、郭靖も後から考えたら冷や汗ものだったのではなかろうか。
それに、神鵰本編を見ていても、郭靖は九陰真経の全てを学びきれていないように感じる。特に外功については殆ど使っていない(大伏魔拳法や九陰神爪など)。周伯通が射鵰で語った九陰真経の伝説が事実なら、とっくに郭靖が天下一になっていてもおかしくないはずなのだ。自分自身が完全にマスターしていない以上、弟子に伝えようという意識が鈍ってしまうのも当然だろう。

②戦争で忙しく奥義を伝える暇が無かった。
これも大いにあると思う。神鵰十六年後の時点で、郭靖が黄蓉に「降龍十八掌もここ十数年お蔵入りだ」と語る場面がある。どうやら戦で忙しく、達人との一騎打ちをする機会が殆ど無かったようだ。また金庸江湖では「個人の武術は軍隊同士のぶつかる戦場だと役に立たない」というセオリーがある。戦争で必要になるのは、兵士を動かす計略と指揮力であり、武術はそこまで求められていない。この時期は郭靖も弟子の武兄弟も、婿の耶律斉ももっぱら兵卒を引き連れて戦場に出ていた。状況的に、個人同士の戦いに使われる武術は重要視されていなかったのかもしれない。
ちなみに、これについては伝授される側にも同じことが言える。耶律斉はじゅうぶんに九陰真経を受け継ぐ素質を持っていたと思うが、郭家の婿として戦場での役割も大きく、そのうえ丐幇の幇主まで継いでしまった。これでは多忙で技を学ぶ時間などあるはずがない。また丐幇を継いだからには、二大奥義の降龍十八掌と打狗棒術を優先して修得しなければなかったはず。耶律斉が九陰真経に手が回らなかったのはその状況のためと考えられるだろう。

③再び九陰真経を世に出すべきではないと考えていた。
これはちょっと線が薄いけれど、①②の補強として一応つけ加えておく。九陰真経はかつて江湖に血なまぐさい争いをもたらした経緯があり、郭精もそれを知っている。射鵰では限られた人間達の間でのみ争奪戦が行われ、江湖全体を巻き込むような騒ぎにはなっていなかった。しかし、郭靖の頭には常にその危惧があったのかもしれない。郭靖も黄蓉も九陰真経の外功を殆ど使用しなかったが、それも人目につくことを避け、争いの原因を作らないようにするためだったのではないか。
未熟な子供や弟子達へ伝授すれば、強力な武功ゆえそれに頼る局面が増え、必然的に世間の目に留まるリスクも高くなる。もしも「郭大侠が伝説の九陰真経を持っている」などとバレたら一大事だ。モンゴルとの戦争で手一杯の状況なのに、九陰真経を狙う江湖の荒くれまで相手をする羽目になったら身が持たなかっただろう。とはいえ、倚天の時代には謝遜をはじめ、郭靖が九陰真経を修得していたことを知る者が少なからず存在している。もしかするとどこかで噂を知られて、結構面倒な事態になっていたのかもしれない。
ただし、後の時代になれば話は別だ。郭靖は最後になって倚天剣へ奥義を遺すことに決めた。江湖へ争いをもたらす危険性はあったが(事実そうなってしまったんだけれど)、正しい心を持った者が正しく用いてくれることに期待したわけだ。その願いは、無事張無忌によって果たされることになる。

以上、九陰真経が失伝してしまった可能性について、長々書いてみました。
武兄弟の子孫とか丐幇が軒並み堕落している状況を考えると、あえて直接的な伝授を避けた郭靖と黄蓉には先見の明があったのかも、なんて思ったりもします。

今更! バトルスター・ギャラクティカ 艦隊戦戦術論

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感想(2件)

今更過ぎるSFドラマ「バトルスター・ギャラクティカ」の考察です。本編視聴前提ですのでわかる方のみどうぞ。

バトルスター・ギャラクティカは2003年から2009年まで放映されたアメリカのSFドラマ。
十二の植民惑星に住む人類が、自ら作り出したロボット生命体・サイロンの反乱によって壊滅に追い込まれ、僅かな生き残りを率いて伝説の星・地球を探す壮大な物語。
本作の見所は沢山あるのだけれども、その一つが重厚でリアリスティックな宇宙戦闘シーン。普通SFのスペースバトルといえばキラキラしたビームや現代の科学力を大きく飛び越えた超兵器が飛び交う画面を想像するだろうけど、本作は敵も味方も実弾兵器を使い(最大火力も核兵器止まり)、戦闘機はダッシュや姿勢制御に細かくスラスターをふかし、主役戦艦のギャラクティカは外観も中身も実在兵器の延長線上にあるようなレトロぶり。それがまたとないリアルさと独自性を生み出している。まさにSFの新境地を開いた素晴らしい宇宙戦闘なのだ!
しかし……本作の主体は人間ドラマであり、これだけ気合入れて描写しているにも拘わらず、戦闘シーンはむしろ本編のオマケに近い。そのせいか、戦闘における戦術や、人類側の戦艦ギャラクティカとサイロン軍の母艦ベーススターのスペック差などについても劇中では殆ど触れられない。

で、私はドラマを見てずっと気になっていることがある。
バトルスターとベーススター、両軍の母艦が遭遇した場合の、通常戦術とはどのようなものなのだろうか、と。
何せ本編のギャラクティカは、何十隻という民間船の護衛という使命があるため、ベーススターと出くわしてもひたすら逃げの一手である。何度かやむなく戦う状況もあったが、四シーズン通しても十回に満たない。
というわけで、両者が通常戦闘を行った場合、どんな戦いが繰り広げられるのかをちょっと考察してみる。ちなみに本編(シーズン1~4 および単発ドラマrazor、the plan)のみを参照して書いてます。

まずはギャラクティカとベーススターの装備・スペックについて本編の内容をもとに検証していこう。

ギャラクティカの武装は以下の通り。
①上部二連主砲。計四門。過去はもっと沢山装備されていたが、ギャラクティカが退艦予定だったので撤去されてしまった模様。レイダーおよびミサイルの迎撃に使われ、命中すればベーススターの装甲も破壊可能な威力を持つ。主砲が上下左右に動くので、射角は広い。ただし連射には若干間隔がある。
②側面砲塔。船体側面に沿って多数装備されている。対空防御としてベーススターとの戦闘時は基本打ちっぱなし。接近してくるミサイルやレイダーを打ち落とす。射角は主砲に比べると狭めだが、防御効果は非常に高く、シーズン2第1話の戦闘シーンではその弾幕の激しさが描写されている。シーズン後半では弾切れをおこしてしまったのか使用シーンが無くなる。
③核弾頭。ギャラクティカの切り札。普段は内部に収納されている。うまく当てればベーススターも木っ端微塵。しかし段数が限られているので、使用は限られる。
④艦載機のバイパー。偵察から戦闘までなんでもござれの万能単座戦闘機。シーズン初期は旧式のマークⅡタイプが使われていたが、後期はペガサスからの補給もあり、最新機のマークⅦが多くなっていった。一回の戦闘における出撃数は大体20~40機。本来は40機運用らしいが、本編のギャラクティカは常にパイロット不足、機体不足に悩まされそういう状況は少なめ。
④偵察機ラプター。後半はミサイルを装備して戦闘にかり出されるようになった。恐らく側面砲塔の弾切れを補うため? 劇中で説明が無いためこのへんは憶測。

さて、劇中で見ていて特に興味深いのはバイパーの運用法だ。対ベーススター戦におけるバイパーの任務は、もっぱら敵戦闘機の迎撃である。母艦攻撃はまったくといっていいほど行わない。別に武装が貧弱というわけではない。ミサイルを装備してるし、状況に応じては核兵器も搭載可能だ。それがひたすら対レイダーに用いられているのは、レイダーがギャラクティカの防御網をかいくぐって攻撃してくるからだろう。
本編を見てもわかるのだが、ギャラクティカの砲塔の有効防御範囲は、ベーススターと向き合っている正面部分に限られる。真っ直ぐ向かってくるミサイルなら問題無く打ち落とせるが、その防御範囲を大きく迂回して攻めてくるレイダーは防げないわけだ。ゆえに、バイパーに頼るしかない。こう書くと、一見ギャラクティカが守勢に回りすぎているようにも思える。敵はミサイルとレイダーで雨あられと攻撃を浴びせてくるのに、こちらは守るばかりでどうやって攻めるのか?
そこで論点になるのがベーススターのスペックだ。こちらは下記の通り。
①ミサイル。通常弾頭と核弾頭を織り交ぜて使用。船体の至る所に砲塔が設置されており射角に隙は無い。なので敵がどの方向から迫ってきても対応可能。また、ギャラクティカが人間の生活空間に省いているスペースも、ロボットであるサイロンは弾薬庫などに回せるため、武装の搭載数は圧倒的に上回っている。
②艦載機レイダー。バイパーと同様、戦闘から偵察までこなせ、さらに単独のジャンプ機能まで備えた優秀設計。ウィルス攻撃も出来る。しかも無人なのでパイロットの消耗を気にせず運用可能。主要装備は機関砲とミサイル。ベーススターに無数搭載数されており、常に数の暴力で圧倒してくる。が、その割には数十機のバイパーで毎回何とか対応出来てしまうあたり、戦闘機同士の戦いはちょっと苦手なようだ。生体脳を入れることで、自己回復や学習機能といった生物らしい能力も持っているが、反面生き物の限界を超える反応速度は不可、病気にかかるなど、生物としてのデメリットも持ってしまっている。これはベーススターも同様。
上記の通り、攻撃力は圧倒的にベーススターが上である。
では、防御力はどうだろう? ギャラクティカについては、かなり堅牢である。現役から四十年が過ぎた戦艦にも関わらず、ベーススターのミサイルを何発浴びでも沈まない。シーズン3では行動不能に陥ったところを四隻のベーススターから囲い攻めにされたが、それでもペガサスが駆けつけるまで持ちこたえていた。まあ、沈まないのは物語上の都合も大いにあるとして。
対するベーススター。実は結構脆い。シーズン2の再生船をめぐる戦いでは、ペガサスとギャラクティカから通常兵器で挟撃され一隻が撃沈。もう一隻もペガサスから大ダメージを受けている(描写は省かれたが、恐らく撃沈か、撤退に追い込まれている)。シーズン3のニューカプリか脱出時も、ペガサスの正面大口径主砲でも大ダメージを受け、2隻が撃沈している。この脆さ、本編では説明されていないが、ベーススターに生体パーツが組み込まれているせいもあって、装甲強度は機械部品オンリーだった旧大戦時より落ちたのではないかと推測する。
つまり、ギャラクティカは防御しながらの反撃でじわじわダメージを与えていけば勝機があるわけだ。

まとめると、ギャラクティカの艦隊戦通常戦法は下記のようになる。

①ベーススターと遭遇したら、攻防に適切な距離と角度をとる。
②主砲・側面砲塔一斉射撃。接近してくるベーススターのミサイルとレイダーを片っ端から打ち落とす。
③安全空域を確保したらバイパーを発進、弾幕をすり抜け死角から襲いかかってくるレイダーを迎え撃つ。
④あとはひたすら持久戦。敵の苛烈な攻撃をしのぎつつ、主砲をじわじわ浴びせてベーススターを撃退もしくは撤退に追い込む!

てな感じではなかろうか。しかし、毎回こんな調子で戦っていたらあっという間に弾切れを起こしてしまう。本編のように補給もままならぬ状況では、逃げ回るのも致し方なしといえるだろう。
またこの戦術でいくと、基本的には物量がものを言う。結局のところ戦いは数なのだ。そこらへんも、どこまでも戦争をリアルに描いているギャラクティカらしい、といえるかもしれない。

amazon fire HDを使ったコスパ抜群な小説執筆デバイスはじめました

三年ほど使っていた小説執筆のお供、Pomera DM30があえなく壊れてしまいました。
残念ながらDM30は既にメーカー在庫切れ、現行品のDM200はちょっとコンセプトが自分好みでないうえに、何よりお値段が高い!(未だに店舗で¥40,000くらいする)

何か代替出来そうなものを…といっても、pomeraのように執筆に特化した扱いやすいツールというのはなかなかありません。surfaceやipadは値段高いし使わない機能多すぎるし…。
そこでネットを検索してみたところ、ちょくちょく引っかかったのがamazon fireタブレットを執筆ツールに特化して使用するというもの。

必要なのは

・amazon fireタブレット
・キーボード(有線・無線何でも)

これのみ。お手軽でしかも安い! 私の場合、ケースやスタンドといったアクセサリを含む金額を入れてもかかったのは¥12,000ほどでした。コスト的にはpomera DM200の三分の一くらいです。
amazon fireタブレットはサイズがいくつかありますが、今回は8インチを購入。大きすぎず小さすぎずで、ちょうどいい案配です。
画像のように折り畳みのキーボードと一緒に使用すれば、Pomera並のコンパクトさ。どこでもお手軽に執筆出来ます!
小説執筆にしか使わないつもりなので、動画や音楽のアプリはまとめてフォルダに放り込んでおきます。ネットも基本切っておきます。使うのはテキストアプリのみ。余計なものを入れていないので立ち上がりも早く、pomeraの利点である電源入れたらすぐ書ける、もクリアしています。これで執筆に集中出来るデバイスの完成です。
今のPomeraより優れているのは、ファイル共有をネット上でも行えることで、いちいちUSBを繋ぐ必要がありません。Wi-Fiを使ってパソコンの文書データを呼び出し、そっちを編集することも出来ます。これはいい!

…が、今のところ問題なのはどのテキストアプリを使うか、といったとこでしょうか。ひとまずは無料で手に入る「JotterPad」を使ってます。シンプルな文書作成ツールで、ファイル選択画面も見やすく、かなりpomeraに近いです。問題は横書きしか出来ないところ…。まあ気分の問題なんですが、やはり小説は縦で書きたい。本当はTATEditor入れたかったんですが、ダメでした。

ここまでいいこと書いてきましたが、当然ながら欠点も存在します。
一つはデフォルトで手に入るアプリが、Amazonストアの物しか無いので、いい文書作成アプリがあってもお手軽に使えないこと。上記のTATEditorが入れられなかったという理由はそのためです。まぁ調べると色々やり方はあるので、JotterPadに不満を感じたら変えようかと思います。
二つ目は充電式なので、pomeraのごとく乾電池変えてすぐ執筆続行が出来ません。ただし、pomeraのようにキーボードが壊れたらもうおしまいになるところが、タブレットなのでタッチ入力するか、そこらの電気屋でキーボードを買って即復帰が可能。つまり事故にも強い。タブレット本体も安いので、二個持ちもありでしょう。
ちなみに今回私が買ったキーボード、Enterが思いのほかちっちゃくてpomera慣れしていた手にはちょっときつい。普通の折り畳みよりはキーが大きめなのはいいんですけれどね…。このへん、アプリやキーボードの選び方次第で大分使い勝手が変わります。自分でツール選べる、というのも見方を変えればPomeraに無かった強みです。
三つ目はPomeraでお世話になってた単語登録機能や辞書機能。あと、目に優しい電子ペーパーとお別れなのもなぁ…。まあ求めたらキリが無いですが。

まとめとしては
・とにかく安い!
・自分でアプリやキーボードを選んだり、Pomeraで不満だった部分を解消できる。
あたりでしょうか。

しばらくはこれで執筆ライフを満喫してみようかと思います。

愛情宝典「救風塵」

前回の記事に引き続き。
2002年の大陸ドラマ。監督は张多福、朱德承。
中国古典小説の有名タイトルをオムニバス形式で映像化している。一つのお話につき約5話で、全5作。内訳は「救风尘」「绿牡丹」「风筝误」「小棋士」「卖油郎」。

今回はそのうちの「救風塵」をレビュー。元ネタは元曲の有名な一編。

原作通りだと恐らく一話も持たずに終了してしまうためか、大幅に水増しが行われている。しかしいじりすぎて、ストーリーは殆ど別物。
原作は世間知らずな妓女・宋引章が非道な男に身請けされて災難に遭い、知恵の回る姉貴分・趙盼兒に救われる話だったが、ドラマ版は趙盼兒の叶わぬ恋が主題になっている。宋引章を助けるくだりは殆どおまけ。多分タイトルは「赵盼儿、叶わぬ恋に五度涙を流す」とかの方が適当だと思う。これはこれで面白かったんだけど、原作を知らない人が見たら勘違いしてしまいそう。
主演の趙盼兒は「卖油郎」の莘瑶琴と同じ乐珈彤。キャストはいいとして、衣装やセットまで使いまわし放題(笑)。予算無かったのかな…。まあ舞台の時代が近いし、話も妓女ものだからそこまで気にならないけど。

以下キャスト
乐珈彤/赵盼儿
開封の妓女。義気に厚い姉御肌。安秀实に恋心を抱き、彼のために奔走するが、とうの安秀实の心には常に宋引章しか無く、何度も泣く羽目に。
こういう報われない系ヒロインは好きなんだけど、ちゃんとラストにもフォローが無いとやっぱり可哀想過ぎる。
演じる乐珈彤さん、やっぱり妓女がはまり役では?今回は舞う姿も披露してくれる。「卖油郎」の時とは配音さんが違うので、こっちは大分大人なイメージ。

范冰冰/宋引章
開封の妓女。善良で美しく、男達をひきつける。周舍に騙されて嫁いでしまい、DVに苦しむ。
あの范冰冰が演じている。本作の落ち着いた雰囲気の宋引章には合ってるけれど、原作とは大分違うかな。

沈晓海/周舍
イケメンの道楽人。善人を装う悪党(なんかこの演者さん、いつもこういう役ばっかりやってるな…)。安秀实を陥れ、また宋引章を騙して妻にする。窃盗殺人買収何でもござれ。原作はおバカなイメージがあったが、ドラマ版では狡猾さも加わり、相当な悪人ぶり。

李解/安秀实
試験のため上京してきた読書人。真面目で騙されやすい。周舍の陰謀で無一文になってからは代筆業で働く。恋にはひたすら一途だが、そのせいで赵盼儿が泣きを見る羽目に。古装ドラマで定番な、恋心を抱いてる相手に「僕の姉妹になってください」攻撃もきっちりやってくれる。こいつはこいつで結構やな奴だと思う。

赵玲琪/宋妈妈
引章の母。周舍の優しさに疑いを抱きつつも結婚を止められず。

陈嫣嫣/芳儿
趙盼兒の侍女。主人の叶わぬ恋を、文句を言いながらも見守る。以下はみんなドラマオリジナルキャラ。

杨昶/庆儿
宋引章の侍女。主人を裏切り周舍と私通するが、裏切られて売られる。自業自得だけど可哀想。

党永德/安平
安秀实の従者。主人を思いやるいい男だが、周舍に殺されてしまう。

许娣/刘妈妈
妓楼のおかみ。赵盼儿の恋の悩みをバックアップ。あんまり役に立たない。