台湾の中華電視公司が製作した中国古典四大名著の「紅楼夢」ドラマ版。全73集と紅楼夢ドラマの中では長めの方。
大分前から見始めたんだけど、完走までにかなり時間がかかってしまった。話数が多いから…ではなく単純につまらなかったから。
古典名著の映像化だというのに、製作のノリがあまりに普通の古装ドラマだと思う。衣装、セット、演出、どれも平凡。要するに気合いが感じられない。あと、日本のコント番組で流れるような間抜けな音楽や効果音は何とかならなかったのだろうか。時代的にしょうがないのかもしれないけれど、しょぼい特殊効果にもがっかりさせられる(この時代の古装ファンタジーなんてみんなこんなもんかもしれないけど、ちゃんとやれば87年ドラマ版とか89年映画版の重々しい雰囲気は作れるんだからもう少し何とかなったんじゃないのかな)。
キャストは主要キャラは史湘雲や探春を除くと軒並み壊滅気味。まあでも本人達のせいじゃなくて上であげた衣装とか演出のせいだと思う。侍女勢はおおむね良かった。
物語も長さの割に、各エピソードの尺の使い方やチョイスが変だと思う。紅玉(小紅)のシンデレラ話や、尤二姐の悲劇にめちゃくちゃ話数費やしたりする一方、肝心のメインである宝黛釵の恋愛は原作から特につけ足し無し。さすがに宝玉達が五話以上も連続で出ないのはどうなんだ。一応、話数が長いので原作の内容はほぼカバーされてるけど。
良かったのは賈家崩壊後のお話だろうか。原作とオリジナル、あとは恐らく過去ドラマの要素をうまくミックスしている。乞食になって渡り歩く湘雲、蜘蛛の巣がはって荒れ果てた大観園をまわる姉妹達、など珍しいものが見られる。というかそれぐらいしかいいところは無い。正直、紅楼夢ドラマとしては2010年版とどっこいなレベルで悪い出来だと思う。
以下キャスト(全員は書き切れないので気になった人物のみ)
钟本伟/贾宝玉
主人公の変人公子。黛玉伝の時も思ったけれど、大人の男性が宝玉を演じるのはビジュアル的に結構きつい。終盤はまあいいんだけど前半が…。賈家崩壊後は失われた曹雪芹原作の一説を採用して更夫(夜回り)をやっている。映像化としては珍しい。どうでもいいけど、姉妹達と一緒に暮らしているんだから髭くらい剃ってもらっては。
张玉嬿 / 林黛玉
メインヒロイン。演技はいいんだけど、衣装とか化粧とか演出で台無しにされてる。脇役に出番を奪われていまいち存在感がない。部屋を出ようとして力尽きるという、地味に独特な死に方をした(他の紅楼夢では大体寝床の上で亡くなる)。
邹琳琳 / 薛宝钗
メインヒロインその2。撲蝶の演出がダサすぎ。演者さん、本物の蝶々を素手づかみしてるのがなんか笑える。顔立ちにあまり個性がなくてなかなか覚えられなかった。婚礼前は黛玉との友情に背くことへの葛藤や、偽装婚礼に憤りながらも逆らえない辛さなどが長々描写されるんだけど、あんまりめそめそ泣くのは宝釵らしくないかな。まあこれは話が長いことによる引き延ばしのせいもあるだろうけど。黛玉死後は結構ヒロインしてるんだけどうーん、どうしてこんなに面白くないんだろうか…。
徐贵樱 / 王熙凤
賈家の若奥様。家庭騒動のエピがかなり水増しされているので出番も増加。正直宝黛釵を差し置いて完全に作中の主役ポジション。子供を産めない悲しみや、家庭の中で板挟みになる苦労など描写も細かい。
王玉玲(郭慧雯) / 史湘云
史家のお転婆お嬢様。主要キャラでは一番はまってる。演じる王玉玲さんが撮影途中で亡くなってしまい、終盤は別の演者さんに変わっている。嫁ぎ先がお取り潰しにあった後、乞食になってさまよう。これまた珍しい映像化。
汤兰花 / 贾元春
賈家四姉妹の一人にしてお妃様。宝玉と宝釵の結婚を命じる。
李星瑶 / 贾迎春
賈家四姉妹の一人にして気弱なお嬢様。どうせ引き延ばしたくさんやるんなら嫁いだ後のエピソードとか入れて欲しかったけど特にそういうのは無かった。
毛训容 / 贾探春
賈家四姉妹の一人にして聡明な薔薇のお嬢様。目玉になる家事取り仕切りの場面があんまり印象に残らなかった。こういうところをもっと見せて欲しいんだけどな。
王佳莉 / 贾惜春
賈家四姉妹の一人にして画才ある偏屈お嬢様。87年版にあった劉ばあさんとの絡みがなくて出家後も影薄め。
张琼姿 / 秦可卿
李威仪 / 李纨
若き未亡人。一人息子の賈蘭を育て上げ、賈家崩壊後は宝玉達と一緒に暮らす。病をわずらっており、息子の合格直後に亡くなってしまう。
胡惠玲 / 妙玉
妙齢の尼僧。本作はさらわれて遊女になるラスト。87年版の史湘雲のラストをこっちに持ってきた感じだろうか。
傅碧辉 / 贾母
牟希宗 / 贾赦
栄国邸の主人。石阿保の扇子や迎春を嫁がせるくだりが詳しめに描かれている。
金士会 / 邢夫人
傅雷 / 贾政
栄国邸の主人。最後凄い格好してたが原作より過酷な場所に飛ばされてしまったんだろうか。
韩湘琴 / 王夫人
賈宝玉の母。優しい顔して諸悪の根源。賈家崩壊時に亡くなってしまい、熙鳳も牢獄なので以後は宝釵が賈家の女子達をとりまとめている。
徐乃麟 / 贾琏
賈家の若様にして王熙凰の夫。水増しされた尤二姐関連エピのおかげでクズ描写が増加。なんか原作より暴力的。
董文汾 / 平儿
熙凰の侍女。小紅に同情したり、尤二姐を影から助けたり、偽装結婚での黛玉の死を深く悲しんだり原作同様良心の塊。
周筱云 / 尤二姐
中盤のヒロイン。六話近くにわたってお話の中心にいた。原作読んでる側からするとこんなじめじめした話を水増しされてもなぁ、という気がする。
宋瑞丽 / 秋桐
賈璉の三人目の妾。熙凰にけしかけられたのも手伝って尤二姐を虐め倒す。正直、本作じゃなければそんなに出番を与えられるキャラじゃないと思う。
曾亚君 / 赵姨娘
探春の母。原作以上にトラブルメーカーとしての部分が強調され出番が増えている。小紅にまで絡んで宝玉との密通を告げ口しようとしたりするところはやり過ぎ。
陈皓 / 贾环
萧艾 / 袭人
宝玉の筆頭侍女。本作は侍女関連のエピがどれも充実している。襲人も良いところ悪いところが余すところなく描かれていていい感じ。
杨洁玫 / 晴雯
宝玉の筆頭侍女。襲人とのライバル関係が強調されている。お嬢様達と同クラスの美人な演者さんで結構目立つ。
蓝丽婷 / 麝月
曾心怡 / 秋纹
原作より三割増し性格悪め。晴雯がやっていた格下侍女いじめも秋纹に割り振られている。
周承芳 / 紫鹃
黛玉の侍女。紫鵑ってどの紅楼夢ドラマでもミスキャストな感じの人が少ない気がする。演じやすいのかな。
唐馨 / 雪雁
原作より紫鵑との絡み多め。
柯淑勤 / 鸳鸯
杨琼华 / 小红
賈家の侍女見習い。ちょっと小賢しそうな顔立ちが原作通りでグッド。賈芸と結ばれて屋敷を出るが、終盤の賈家崩壊時には捕まった人々を慰めにやってくる。出番がめちゃくちゃ増えており、どうして小紅がこんなにプッシュされたのか謎。制作陣にファンがいたのだろうか。まあ私も好きなキャラなのでここらへんは面白かったけど、大半の紅迷はもっとメインのキャラをピックアップして欲しいと思うぞ。
徐亨 / 贾芸
刘越逖 / 贾瑞
陈玮 / 丰儿
黄宁敏 / 彩云
王夫人の侍女。無理矢理賈環とくっつけられそうになってしまう。原作だと彼女の方が環を慕ってる感じだったけど。
陈桂莲 / 春燕
冷冰冰 / 司棋
范鸿轩 / 贾珍
鲍正芳 / 尤氏
芳玉 / 薛姨妈
李又麟 / 薛蟠
薛家のバカ大将。賈璉とかに比べるとエピの盛られぶりが少なくて目立たない。
江岱恩 / 莺儿
张清慧 / 香菱
池华琼 / 邢岫烟
施羽 / 蒋玉菡
舞台役者。中盤で宝玉と友情を結ぶ。売られている襲人を六十両で買い取った。競り負けた男の人は花自芳かな?
唐志伟 / 柳湘莲
马世莉 / 尤三姐
尤二姐の妹。姐のエピが盛られてるのに反して三姐は殆ど盛りなしであっさり退場。
冯海 / 贾雨村
唐琪 / 刘姥姥
賈家の遠縁。原作通り賈家へ遊びに来たり、終盤の巧姐救出で活躍。
张琼姿 / 警幻仙姑
太虚幻境の主。宝玉に見せた情榜がめっちゃ安っぽい出来。だからこういうところがダメなんだってこのドラマは!
刘德凯 / 情僧 澎恰恰 / 癞头和尚
天界への案内人。時々出てくる。しょっぱなのダサい特殊効果はなんとかならなかったのか。