中国歴朝通俗演義

中国古典小説の中でも、実際の歴史を元にした作品を講史もしくは演義小説と呼ぶ。
この演義は大きく分けると王朝を語ったものと偉人を語ったものの二つに分れ、前者はみんな大好き三国志演義や隋唐演義など、後者は楊家将演義や洪秀全演義などがある。

で、王朝を扱う演義小説は、その王朝一代分の始まりと終わりまでを扱うのが基本。ところが、なんと歴代の王朝を全部まとめて書こうと試みた演義小説が存在する。
それがタイトルにある「中国歴朝通俗演義」。作者は蔡東藩。舞台は秦~民国期の途中までと滅茶苦茶長い。執筆期間は十年、字数も六百万にのぼる、まさに大作。
作者が清末生まれなのと、語り口が旧来の小説を踏襲していること、執筆開始が1916年とぎりぎり文学革命手前なので、一応古典小説扱いになっているようだが、実質的には近代小説にカテゴライズすべきかもしれない。作者の執筆動機や主張も、西欧列強や日本の侵略に対する民族危機意識が強い模様。
ちなみに紹介してる私も読んだことはない。長すぎて気が遠くなる笑

上で全部の王朝、とは言ったが正確には全てではない。周より前は省かれている。また、各王朝の物語は独立しており「前漢演義」「後漢演義」「両晋演義」「南北史演義」「唐史演義」「五代史演義」「宋史演義」「元史演義」「明史演義」「清史演義」「民国演義」から成る。ちなみに各章の執筆時期は時代順ではなくかなり前後している。また民国演義は日中戦争や作者の病気により中断。作者の死後、別人の続編として「抗戦演義(日中戦争期が舞台)」なんてものも書かれているらしい。

あまりに長すぎるし日本での需要も無いと思うので恐らく今後翻訳されることも無いだろうと思うけれど、日本で誰にも知られないままなのは惜しいなぁ、と何となく紹介させていただきました。
読んでみたいぜ、という方は中国のネットをあたれば無料で読めます。是非お試しあれ。

コメント

  1. 偽君子 より:

    この小説、ザッと読んでみましたが、どうも荒唐無稽な与太話ばかり民間に流布するのを苦々しく思っていたらしいんですね。特になんか唐代絡みの話が多い(西遊記も含めて)のについて、ああいうのを野放しにするから義和団の乱のようなくだらん騒ぎが起こるんだ、とか書いていたような。