金庸小説ベストバトルランキング

偉大なる金庸先生の武侠小説で好きなバトルをちょっと紹介してみる。一応ランキングをつけたけれど、どれも大好きなのでその時の気分で入れ替わりはありそう。
個人的な意見だけど、金庸小説は予定調和(勝つのが読む前にはっきりわかってしまう)な主役のバトルより、どちらが勝つのかわからない脇役のバトルの方が盛り上がる気がする。

一位 『神鵰侠侶』より華山での洪七公vs欧陽鋒
射鵰英雄伝から因縁のあった五代武術家の二人・洪七公と欧陽鋒の最後の戦い。雪の華山を舞台に、七日近くもジジイ達が戦い続ける見せ場。素手、得物、内力比べでも決着がつかず、ついには奥義の打狗棒術の型を破れるか頭脳を駆使した勝負に持ち込まれる。決着の果て、宿敵同士が笑い合って抱擁しながら逝くという最期がとても素晴らしい。戦いを見届けて変化する楊過の心情描写も好き。

二位 『射鵰英雄伝』より牛家村での黄薬師vs全真七子 
成り行きで手を交えることになってしまった黄薬師と全真七子の戦い。中盤以降、五代武術家の登場ですっかりインフレにおいていかれてしまった全真教の面々が意地を見せた名勝負。欧陽鋒の横やりが入るまで一晩近く渡り合ってみせた。奥義の北斗陣が設定描写含めてとにかくかっこ良い。陣を敷く際の口上も好き。七子達も、常に激情マックスな丘処機、黄薬師を前にしても冷静な馬鈺、目上への礼儀を気にして頬を打たれてしまう王処一などそれぞれ個性が出ていて良い。

三位 『連城訣』より雪山ので血刀老祖vs落花流水の四達人
中盤というか、アクション少なめの本作で一番の見せ場。脱出不能な雪山を舞台に五人の達人が生死をかけて対決。とっさの機転と狡猾さで、自分と同等レベルの武術家四人を不利な状況から見事に倒しきってしまう血刀老祖があっぱれ。どう考えても悪人な血刀老祖なんだけど、読み手からするとなんとなく彼の奮闘に肩入れしたくなるのが不思議。ちなみに主役の狄雲は完全に蚊帳の外でした。

四位 『笑傲江湖』より衡山での令狐冲vs田伯光および羅人傑
恒山派の尼僧・義琳の口を通して語られる戦い。伝聞形式なので、聞き手である林平之や読者にも、最初は令狐冲の正体がわからず徐々に明かされていく過程が面白い。作中でも言及されている通り、戦っている者達の武力レベルはそんなに高くないものの、格上を相手に口の上手さと知力で立ち回る令狐冲のかっこよさが見所。こういう面白さは小説ならではと思う。

五位 『天龍八部』より少林寺での英雄大決戦
少林寺を舞台に武林の名だたる英雄達が勢揃い。主役の段誉・簫峰・虚竹が義兄弟の契りを交わしそれぞれ因縁の敵に向かっていくシチュエーションが激アツ。とはいえ、基本的に負け無しの簫峰、既にパワーアップがカンストしている虚竹、自由に武功を操れないだけで既に慕容復なんか歯牙にかけないほどの内力と奥義を持っている段誉など、明らかにどれも主役側の勝ちが見えてしまうバトルなのはややマイナスかな。

次点 『神鵰侠呂』より襄陽での楊過vs金輪法王
襄陽での最終決戦におけるライバル同士の対決。金輪法王が十六年で予想以上のパワーアップを遂げ、楊過は愛する小龍女との再会で十全の力が発揮出来ず(楊過の奥義は悲しみの心が原動力なため)、さらに郭襄も人質にとられ思わぬ苦戦を強いられる。しかし、追い詰められて小龍女との別れが脳裏をかすめた瞬間、蘇った悲しみの心で奥義「黯然銷魂掌」が発揮され、金輪法王を見事に打ち倒す。戦場まっただ中での救出劇、因縁のライバルとの対決、華麗な逆転劇ととてもすっきりする戦い。

次点 『笑傲江湖』より少林寺での三本勝負
少林寺に集結した武林の首脳達。娘を救出するため寺に忍び込んでいた仁我行達を逃がすまいと、正派最強の使い手である方証・冲虚・左冷禅が勝負を挑む。この時点における武林トップクラスの達人達の戦いが見物。自らの命をかえりみない向こう見ずな仁我行の戦いぶりが凄い。また、仁我行にけしかけられて戦わざるを得なくなった令狐冲に対し、きっぱり不戦勝を告げる冲虚の潔さも達人らしくてかっこいい。

大体こんなところでしょうか。皆さんも好きなバトルがあればコメントなどいただけると嬉しいです。