金瓶梅「まんがグリム童話」版のキャラ改変

まんがグリム童話 金瓶梅(分冊版) 【第1話】【電子書籍】[ 竹崎真実 ]

価格:220円
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感想(1件)

ぶんか社より刊行されている「まんがグリム童話 金瓶梅」。
既に二十年近く連載が続き、日本における金瓶梅の翻案作品ではトップクラスに有名なのでは、と個人的に思っていたりする。
さて、そんな漫画版だが、主要キャラクターについては原作から色々改変が加えられているのが特徴。今回はちょっとそのあたりを語ってみたい。

西門慶
ご存じ金瓶梅の主人公にして狂言回し。原作ではひどかった妻妾へのDVが無くなり(エロいお仕置きはする)、女性をスマートに愛する優男になった。守備範囲の広さ、精力の強さは原作そのまま。ただし、男色は嫌っている。
初期は主役らしく、女性を守るために自ら悪漢を成敗するかっこいい見せ場もあったのだが、段々原作通り迷惑な知り合いに振り回され、騒動の元凶としての役回りが主になった。

藩金蓮
本作のヒロイン。じゃじゃ馬な性格は原作通り。しかし知恵と行動力に磨きがかかり、あとは原作に無かった義侠心や優しさも持ち合わせ、作中の役回りは完全にヒーロー。原作の金蓮は、騒動ばかり起こす割にさほど報われず、むしろ女性の悲劇を体現したような存在だったので、表面上はともかく本質的には別キャラとも言えるくらい改変されている。漫画版が長く人気を得ているのも、この金蓮の個性あってこそだと思う。

李瓶児
物腰柔らかな金持ち夫人、という設定は原作と同じ。が、漫画版は
・天然悪女
・ド淫乱
・思慮が浅くおバカ

と、女に嫌われそうな女のエッセンスを物凄いレベルでつけ足してある。原作とはほぼ別人。とはいえ、キャラとしての存在感はすさまじく、もはや彼女なしでは漫画版金瓶梅は語れない。

呉月娘
原作は大人しやかで争いを避ける性格。漫画版も初期はそんな風に描かれていたが、実は西門家正妻としての強い誇りを持ち、家を守り抜けるだけの賢さ・実力を持ち合わせたスーパー奥様だったことが明らかに。西門家と敵対した相手、自分の面子を傷つける相手は容赦なく制裁する怖い一面も。とても良い改変だと思う。結婚ほやほやのオリジナルエピソードがあり、その頃の若い月娘はとってもかわいい。

李嬌児
お金にがめつい二番目の妾。ほぼ原作通りで足し引き無し。漫画版は基本一話完結なので、時々主役回もまわってくる。お金好きはキャラとしても動かしやすいようだが、それ以外の個性があんまり無いのでいまいち目立たない。姪の李桂素もそれなりに出番があるが、何だか残念なビジュアルにされ、西門慶も原作のように足繁く彼女の廓へ通ってない。

孟玉楼
主要キャラで最も変更の大きい一人。原作では誰とでも仲良く出来るつきあい上手な夫人だったが、漫画版ではどういうわけか陰気な占い好きキャラ&エログッズ収集人になってしまった。別に原作のままでも他の妻妾とキャラが被るわけでもなし、わざわざ変える必要があったのかなぁ、と思ってしまう。

孫雪娥
第四夫人。厨房女中上がりの妾で金蓮との関係が険悪、という原作の設定に、がさつで気が強いといった性格の個性を足し、大幅に魅力が増した。原作では空気になりがちだった影の薄さも払拭され、主役・脇役どちらでもおいしいキャラに。作中の改変でも最も成功した例ではなかろうか。

春梅
金蓮の侍女。原作の凶暴さはなりをひそめ、忠義心と正義感を兼ね備えたいい子になった。金蓮のわがままに振り回される苦労人としての個性もあり、役回りは立派なサブヒロイン。
容姿も原作と違ってスレンダー美人。あと、濡れ場や陵辱シーンは作中キャラで一番エロいと思う。

秋菊
金蓮の侍女。のろまで無能な設定はそのままに、こっそり西門慶に恋心を抱いたりする純情キャラになった。原作は陰口叩くわ盗みを働くわ、これはこれで社会の最下層を生きる人間の実態をいい感じに暴いた存在だったんだけど、まあエンタメ漫画としては本作の改変で正解でしょう。ちなみに序盤と中盤以降で全然顔つきが違う。中盤からは目が大きくなってとても可愛くなった。

陳経済
原作では西門家の婿だった(ちなみに漫画版では西門小姐も登場しない)が、本作では西門家に仕える薬師、と大本の設定から違う。性格もヘタレでどーしようもない遊び人だった原作と異なり、むっちゃ有能で知恵も回る。金蓮とも割と真っ当な恋愛関係。

武松
割と原作通り。でも凶暴性は控えめ。ビジュアルはイケメン(兄の武松の不細工ぶりがリアル……)。堅物だけど、ちゃんと女性に対してモノが反応するのは原作の武松に無い個性かも笑
滝に落ちて以来まったく出番が無い。

コメント

  1. 黄梅 より:

    この漫画、始まったときは「わたなべまはこ版とどう違ってくるかなぁ」なんてのんきに思っていたのが、もうこんなに続くとは驚きです。正直読みたいのですが、もはや終りが見えないかもと手を出すのに躊躇。孟玉楼の占い好きはなんでー?!と笑った覚えがあります。ここの潘金蓮はカタルシスがありますね。武松、出番いつか来るのかな…?