「夢華録」の原作「趙盼児風月救風塵」について改めて語ってみる

2022年の中国古装劇「夢華録」を見始めました。古装ドラマに興味が沸いたのは久しぶり。
というのもこのドラマ、原作が有名な中国古典戯曲「救風塵」なのです!(まぁ、日本で知ってる人はあまりいないでしょうけど)
が、しかし……ドラマはかなり改編してあるようで原作とほぼ別物。一応原作の要素は拾ってるんですが、ほぼ原型を留めていない。
なので、原作を知らなくてもドラマは楽しめます。

まあでも一応、元ネタにも興味があるよって方のために、僭越ながらご紹介させていただきます。

「救風塵」は元代の戯曲家・関漢卿の作品で、全四幕構成。別題「安秀才花柳成花燭 趙盼兒風月救風塵」とも。
物語の時代は宋代。舞台は鄭州の妓楼。やり手の妓女として働いている趙盼児は、妹分の宋引章が遊び人の周舎と結婚したがっていることに猛反対、真面目な書生である安集実との結婚を勧める。しかし、世間知らずの引章は盼児の制止を振り切り、周舎と結婚。ところが周舎はほどなく豹変、些細な理由から引章を虐待する。辛い生活に泣く引章。趙盼児はその危機を知ると、周舎を誘惑して偽装結婚を行い、引章と離縁させる。結婚する振りをして逃げ去った趙盼児に対し、周舎は裁判を起こすも、機転のまわる盼児に言い負かされて敗訴。引章は安秀実と結ばれてめでたしめでたし、というお話。

風塵とは泥沼の意味で、つまりは妓女達の過酷な世界を示している。
賤民の妓女達は、妓楼にとらわれた不自由な存在である。莫大な身請け金を稼ぐため必死に働かなければならず、また身請けされても良民の女子のように幸せな結婚生活を送れるとは限らなかった(低い身分出身ゆえ他人から侮られる、妓女としての生活が長いせいで一般女子の生活に適応出来ない、などなど)。「救風塵」は、そんな低い身分に生きる彼女達が、横暴な男達に一発食らわせる展開がとにかく痛快な古典名劇なのだ。男尊女卑的な風潮が強い旧中国において、強く逞しく生きようとする女性を描く、という意味では、ドラマ「夢華録」も「救風塵」のテーマをよく受け継いでいると感じる。

本作は平凡社「中国古典文学大系」で翻訳されている。中編程度の長さで読みやすく、元曲の魅力をわかりやすく味わえるのでお勧め。随分昔だがレビューも書いたのでよろしければ下記リンクから参照されたし。
https://ameblo.jp/hopeseven/entry-12072496500.html

また「救風塵」は2003年にドラマ化されている。こちらも原作改編が入っているが「夢華録」ほどではない(と思う。「夢華録」は全部見てないので)。以前にレビューを書いてるのでよろしければ是非。
https://kouroumu.com/2022/01/02/post-746/

というわけで「夢華録」、続きが楽しみな古装ドラマです。