1977年の戦争映画。八一电影制片厂が制作。中国共産党史における重要事件・長征を描く。原作は同名タイトルの話劇。作者の陳其通は実際に長征参加者だったとか。ちなみに1959年に続いて本作は二度目の映画化。
結構有名な作品らしいのでちょっと鑑賞してみた。
あらすじ
井崗山の紅軍(中国共産党軍)は四度にわたる国民党軍の包囲攻撃を退けるが、続く五度目の戦闘では最高指導者王明の戦略ミスにより戦力を喪失。危機に陥った紅軍だが、遵義で新たな指導者となった毛沢東の命令により包囲を突破して転戦、新たな根拠地を目指す。軍閥によって封鎖された赤水河、少数民族の支配地、高大な雪山、果てのない湿地帯、幾多の困難をくぐり抜け、ついに紅軍は延安で合流を果たす。
全220分の超大作。原作は未読だけどそこそこ改変されている模様。文革中に作られただけあって毛沢東礼賛がスゴい。偉大な指導者を演じられる演員がいなかったのか恐れ多くてか、本人は登場せず台詞が出てくるだけだけど。とりあえず最初から最後まで毛主席(と、人民)のおかげ。
紅軍礼賛映画なので、共産党兵士達は皆勇敢で優しく人民の心強い味方、対する国民党はお間抜けで弱く、とわかりやすい構図。長征も史実のような悲惨さはあまり無く、偉大な勝利の礎を築く栄光の行軍イベントとして描かれている。道中での少数民族との邂逅はとっても平和的。これまた脚色されてはいると思うけど。
撮影に際して十五ヶ月かけて実際に長征の進路をなぞったという。人民解放軍も協力しており、雪山踏破や湿地進軍ではロケを敢行しているのが見所。スゴいけど、その割には数カットしかない。あんまりいい画がとれなかったのだろうか。それでも出来の良さからか、雪山のシーンは後の長征映画で流用されてたり。→こちら、その後1959年映画版を見たのですが、解放軍によるロケはもともとそちらの映像だったことが判明しました。つまり本作はオールセット撮影で、ロケ部分は全て流用のようです。確認ミスですみません。(7/16追記)
瀘定橋の戦いは出てきたけど、有名な決死隊二十二人の活躍は描かれていない。というか見せ場であろう戦闘シーンはどれも総じて短め。そもそも大半がセット撮影なので、大作映画の割にあんまお金かかってないな~という感じ。文革混乱期だからだろうか。変な制作事情が見えてきてちょっとヤダ。
長いうえにプロパガンダ臭が凄い映画なので、紅軍ファン以外にはあまりおすすめしません。当時の空気が感じられるのは面白いけどね。
以下主要キャスト
李有国/黄凯
紅軍の政治教員。温雅な性格と強い指導力で兵達に慕われている。この時期の映画の特徴なんだろうけど、演説とか「前進!」の号令場面とか芝居ががり過ぎ。
赵志方/郑邦玉
紅軍の大隊長。戦闘では中心になって指揮をとる。演者さんは旧版「四世同堂」の瑞宣役で有名。
罗顺成/李保义
勇猛果敢な紅軍の副隊長。李有国とは同郷だが、素朴な性格のため突っ走りやすい。