中華人民共和国演義 5、6巻

【中古】 中華人民共和国演義(1) 毛沢東の登場 /張涛之(著者),伏見茂(訳者),陳栄芳(訳者) 【中古】afb

価格:200円
(2020/7/16 18:27時点)
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中華人民共和国演義の五巻および六巻のレビューです。現代中国史の激動を、物語としてわかりやすく描いた良作だと思います。

第五巻「林彪の挫折」
翻訳版の帯の文句は「毛沢東の暗殺を企てた林彪の無残な最期。四人組の陰謀渦巻く中でついに周恩来も他界!」。
前巻に引き続き文化大革命の動乱が語られる。党内で毛沢東に次ぐ地位を得た林彪だったが、劉少奇死後の国家主席になろうとしたため毛沢東と溝を作り、暗殺計画を立てるも失敗し命を落とす。林彪の死により、残された四人組と周恩来の対立が激化。毛沢東は横暴を極める四人組を抑えるため、左遷されていた鄧小平を引っ張り出すが、その矢先頼りにしていた周恩来が亡くなってしまう。

有名な林彪事件は、ほぼ史実をなぞっているのではないだろうか。諸説ある最後の死因については、逃亡に使っていた飛行機の燃料切れが採用されている。
林彪がいなくなったことで四人組はますます暴れ放題。彼らが恐ろしかったのはメディアを掌握していたことに尽きると思う。四人組は軍隊もそこまで持っていなかったし、党内での政治的地位も最高クラスではなかった。それでも大きな影響力を発揮できたのは、やっぱりメディアの力だと思う。張春橋が切れ者として描かれる一方、王洪文はかなり無能な人物となっている。実際どうだったのか気になるところ。江青はヒステリー女王みたいな感じで、読んでいて本当に胸糞が悪い。
そのほか、病気で弱りながらも精力的に働き続ける周恩来の姿が痛々しい。亡くなってしまった古参同志へ思いを吐露する場面は泣ける。
毛沢東も話が進むにつれすっかり耄碌していく。四人組はまるでコントロール出来なくなり、復帰させた鄧小平も猜疑心のせいで重要な仕事をさせられずで、国内の混乱は続くばかり。そんな状況に振り回されたせいか、跡継ぎには有能な人物よりも、出来の悪い王洪文や大人しい華国鋒の方がよいと考えたりする。部下に語る中でいちいち呂后や周勃の故事を引用したりするんだけど、現代社会にそんな旧中国の例えをあてはめるのはどうなんだろうか。人民共和国に至っても、やはり中国が本質的には皇帝の国である、ということなのか。なかなか興味深かった。
この時期の対外的なお話として、ニクソンの訪中が盛り込まれている。ここでもやっぱり「中国はスゴイ!」な持ち上げが多数。中国を訪れた指導者はもれなく没落する、のブラックジョークが笑える。実際、その通りになっちゃってるのがね…。

六巻「毛沢東時代の終焉」
帯の文句は「四人組は失脚し、鄧小平は復権するが…はたしてこの先中国はどこへ行くのか?」
お話は周恩来の死による天安門事件、毛沢東死去、華国鋒・葉剣英らによる四人組討伐、鄧小平の復帰と経済改革、領土返還、そして天安門事件へ…といった感じ。

終盤になってやたら故事の引用が増えていくのだけど、この巻ではとうとう隕石による吉兆まで引っ張り出してきた。謎の隕石落下は、過去の歴史で偉人が亡くなった時のように、周恩来・朱徳・毛沢東の相次ぐ死の予兆だとか何とか。通俗古典小説じゃないんだからさ…。
前の巻で亡くなった周恩来の追悼運動で、四五天安門事件が発生。事件当日の内容はあっさり書かれてるけど、これ数千人くらい死んでませんか? 四人組の悪事を強調するため、こんな書き方になったのだろうか。
迫りくる死に対する毛沢東の独白が印象深い。日本および国民党への勝利、建国事業と対外戦争の勝利、一方で大躍進や文化大革命での失敗。本作では毛沢東の悪い部分もかなり描いているのだけれど、総合的に見れば、彼が国家の英雄であることは揺るがないと思う。
四人組逮捕は本作のクライマックス。緊張感に満ちてとても面白い。毛沢東の後釜になった華国鋒を暗殺すべく暗躍する四人組。それを倒そうと各地の勢力を結集する華国鋒・汪東興・葉剣英コンビ。特に四人組との決戦前夜、身を守るためにと汪東興にピストルを渡された華国鋒が、銃弾を一発だけ残して「(四人組逮捕が)成功するなら銃は不要だ。失敗するとしたら(覚悟を決めて自殺するから)弾はこれだけでいい」と答えるシーンは超カッコいい。もっとも、四人組失脚後は権力にしがみつくヘタレキャラに成り下がってしまうのだけれど。
それにしても、大勢の人間を虐殺した四人組ですら無期懲役で済んでしまうのは、やっぱり文化大革命の構造そのものが歪んでいた証拠なのだろう。彼らの活動はある程度毛沢東の容認のもと行われていたわけで、それを全面的に批判すれば、毛沢東自身を叩くことになってしまうのだから。
党内のトップとして舞い戻った鄧小平は、次々と改革を実行。貧しかった中国を少しずつ回復させていく。対外政策としても、イギリスから香港を、ポルトガルからマカオの返還約束をとりつける。鄧小平の断固たる姿勢はサッチャーをも震撼させた!らしい…。ベトナムに対しても中国は自衛のためやむなく反撃を行った…ということになっている。
諸外国の問題に関してはとにかく中国が圧倒的正義で、外国が悪!のスタンスが最後までぶれなかった感じ。あれ、そういえば日本との関係は全然触れられてない。日中戦争の時といい、この扱いは何なのだろうか…。
ラストは忌まわしき天安門事件だが、その詳細は深く語られずに物語は幕を閉じる。多分、現在でもこのあたりを物語に昇華するのは難しいのではないか。
いつかまた、新たに中華人民共和国演義の物語がつづられるのを待つとしよう。

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