中国目録学 (ちくま学芸文庫 シー47-1) [ 清水 茂 ] 価格:1210円 |
中国の書物に関して、その分類や保存や製法など幅広く述べた研究本。もとは筑摩書房「世界古典文学全集」の月報に掲載していたものだとか。その他、数種の論文も追加で収録されている。
いうまでもなく中国は書物大国で、その歴史の深さも書物の量も日本を圧倒的に上回っている。その国でいかに本が作られ、流通され、保存されてきたか。目録学というタイトルだけれど、わかりやすくいえば中国の本の歴史について述べた本である。さすがに書かれたのが1960年代なので、各所最新研究でフォローが必要なところもあると思うけれど、研究の源流として必要な部分は全部網羅されている感じがするので、とても参考になる。
私は小説史が好きなので、もう少し小説の流通や記録事情を深く書いてほしかったところではあるけれど…。
また、本が大量に生み出されてきたということは、それだけ散逸もたくさん起きていたということ。本書でも断片的ではあるが、宋の女流詩人・李清照が戦乱で蔵書をことごとく失ってしまった話や、現存する最古の蔵書楼である寧波「天一閣」で書物盗難が相次いだことなど、いくつかの悲劇が語られている。
また中国の歴代王朝のみならず在野の文人までもが積極的に本の記録を残したり、校訂を施したり、本をコレクションしたり、昔は書物の価値が現代よりずっと高かったという事情もあるとはいえ、やはり中国は本を大事にしてきた国だと感じられる。
ネットが書物に取って代わられたと思いがちな現代だけれど、ネット上のデータは存外失われやすく記録として心許ないものであることを今の私達は感じているはず。ブログやSNSの記事を熱心に収集して目録作る人なんてほとんどいないだろう。
本書を読み通すと、改めて書物の強さというものを実感出来る。
出来れば最後の後書きとかで、最新の研究とか派生本の紹介してくれればよかったかな〜とは思った。
ともあれ、短くよくまとまった本なので大変おすすめ。