紅楼夢の映像化作品について

中国古典小説の最高峰「紅楼夢」は何度も映像化されている。ここでは代表的なものをまとめて紹介したいと思う。
尺の限られる映画版は傾向として宝黛釵の恋愛エピソードを中心に原作を改変している。また、宝玉役は女優が演じることが多い。
映画・ドラマ版共にストーリーは大体現行本をなぞり、また秦可卿絡みは原作でぼかされていた部分を明確に描写するようにしている。

1927「黛玉葬花」
未見。京劇俳優の梅蘭芳が黛玉を演じている。

1944年映画版「紅楼夢」
モノクロ。上海映画の名女優・周璇が黛玉を演じている。が、周璇は黛玉の暗い性格が嫌いだったとか。二時間の長丁場ながら、話の取捨選択には疑問を感じる部分も多い。襲人のぶりっ子ぶりがうざい。

1962年映画版「紅楼夢」
ショウブラザーズ制作。ストーリーは余計な部分を切り取り、すっきりまとまっている。古装名女優の楽帝が黛玉役だが、個人的にはあんまり黛玉のイメージではない…。

1962年映画版「紅楼夢」
越劇映画版。越劇名優の徐玉蘭が宝玉を演じる。全編通して歌満載。ビジュアルがちょっとね…。

1975年ドラマ版「紅楼夢」
一部しか見れてない。TVB制作。僅か7集しかなく、宝黛釵のエピソード中心。キャストも絞られている。伍卫国が賈宝玉を演じている。

1977年ドラマ版「紅楼夢」
これまた香港の佳艺电视台が製作。一部しか見れてない。全100集とあらゆる紅楼夢ドラマの中でもブッチギリの話数。セット衣装音楽どれも香港古装カラーが全開。1975年版と同じく伍卫国が賈宝玉を演じる。賈宝玉を二度演じた例はこれきり。黛玉役の毛舜筠も、宝釵役の米雪も、個人的には往年の武侠ヒロインのイメージが強かったり。

1977「金玉良縁紅楼夢」
未見。ショウブラザーズ制作。監督は「西太后」「倩女幽魂」など古装もので有名な李翰祥。林黛玉は林青霞。

1987年大陸ドラマ版「紅楼夢」
ご存じ紅楼夢ドラマの決定版。全36集。とにかくキャスティングが見事。陈晓旭の黛玉は、ビジュアルも中身もそれまでのイメージを覆したと思う。単なる見た目の美しさ以上の再現を目指した結果だろう。製作裏話などでよく語られるが、原作ぴったりのビジュアルを重視して演劇業界と無関係なところから引っ張られてるキャストが多い。ストーリーも丁寧に映像化、終盤はドラマ独自の完全オリジナル展開になるが、これがまた素晴らしい出来。湘雲の最後はやるせない。そのほかファンタジー色を削ることで、現実味の強いドラマになった。音楽がどれも良くて印象に残る。

1989年映画版「紅楼夢」
全6部作12時間。87年ドラマ版とほぼ同時期に製作。こちらは最後まで現行本に忠実なストーリー。ただし、一部の話は時系列を入れ替えている。キャストはドラマ版と大分異なるベクトルで集められているが、こちらはこちらで素晴らしい。晴雯と湘雲はかなり好き。ちなみに黛玉を演じた陶慧敏さんはこの時33歳である。全然見えないのがスゴイ。

1996年台湾版ドラマ「紅楼夢」
全73集。見てない。しくしく。

2000年ドラマ版「紅楼夢」
越劇風ドラマ。全キャストが女優。一部エピソードは入れ替えあり。宝玉誕生時のあれこれ、秦可卿の侍女のその後、司棋と藩又安の恋愛、嫁いだ迎春のDVなど、他の映像作品では見られないシーンが沢山あって面白い。新しいドラマを作るなら、単なる原作再現ばかりじゃなくてこういうアプローチももっとやって欲しい。

2009年ドラマ版「黛玉傳」
全35集。タイトルは「黛玉傳」だが、中身はフツーに紅楼夢。キャストは2010年ドラマ版のオーディションで勝ち残った者を起用している。衣装含めたビジュアルは2010年版よりマシ。全体的に可もなく不可もない出来。紫鵑がとっても可愛い。

2010年ドラマ版「新版紅楼夢」
全50集。大陸二度目のドラマ化ということで、かなり気合を入れて作ったはいいが、見事に爆死した作品。厳選されたキャストは衣装のせいでビジュアルが台無し。2010年代は紅楼夢以外の四大名著も続々リメイクされ、割とドラマオリジナルな解釈を盛り込んでいたのに、本作は特に無し。かといって原作再現出来ているかと言われたら、そうとは思えない部分がかなりある。87年版と比べて何一つ勝っている部分が見当たらないのが悲しい。お金と人は存分につぎ込まれていると思うが、紅楼夢ドラマとしてはおすすめ出来ない作品。

このほか、戦前に多数の映画作品あり。どれも未見で手元の情報も少ないので、またいずれの機会に。87年版の偉大さはこの先も揺るがないと思う。