今更すぎるハリポタ恋愛考察 前編 ハーマイオニーとガリ勉な青春!

ファンタジー小説の伝説的名作「ハリー・ポッター」。今更ながら、書きたいことがあったのでコラムを書いてみようと思う。
ヒロインのハーマイオニー・グレンジャーについても皆さんはよくご存じだろう。優等生なガリ勉女子。堅物でちょっと目立ちたがり。基礎的な容姿は多分、そんなに可愛くない。クラスにも一人はいそうなタイプだ。
この手のキャラって、恋愛とかには総じて苦手意識があったりしそうなものだけど、ハーマイオニーは違う。
作中描写を見る限り、彼女は結構モテている。クラスメートはもとより、クィディッチのスーパースターまでひっかけているのだ。
そう。彼女は勉強だけで無く、恋愛面も優等生だったのだ。しかし、そこに至るまではガリ勉女子らしい、影の努力がいくつもあった。
今回はそんな彼女の青春模様について考察していきたい。

さて、ハーマイオニーについて時々言われるのが(というか作者自身の口からも言われてしまったことだけど)、何故ハリーとくっつかなかったのか、である。作者自身の意図は別として、作中のハーマイオニーも、しばらく二人の間で揺れていた期間があったのではないかと、私は思っている。

ハーマイオニーの青春の目覚めはいつか。半ば無自覚だろうけれど、やはり二巻くらいだと思う。そう、彼女は詐欺師野郎のギルデロイ・ロックハートにお熱だった。時間割の防衛術の項目にハートマークをつけたり、クソみたいな授業を受けさせられても強引に擁護したり、普段の理屈っぽい彼女に比べ、物凄く感情がにじみ出ている。
大人の出来る男に対する憧れは、一定の年齢に達した女子が持ちやすい幻想だ。彼女の恋の始まりも、大方そんなところだったのだと思う。女子は大人になるのが速いし、そのうえ読書や勉強に邁進している彼女からすると、同年代の男子などガキにしか見えなかったのではなかろうか。
しかし、早々にロックハートの正体に気づけたのは、彼女の今後にとっても幸いだったことだろう。淡い初恋の終わりは彼女の目を覚まし、一つの学びを与えた。イケメンだとか地位があるとか、そんなのは必ずしも男を計れる物差しじゃ無い、と。事実、後の彼女はイケメンのセドリックやスポーツ選手のスターであるクラムに群がる女子達と同じ生き物にならずに済んだ。
さて、オトナの男に対する憧れを打ち砕かれた彼女は、身近な同年代の男に意識が向き始めたのではなかろうか。
他ならぬ、ハリー・ポッターとロン・ウィーズリーだ。一年生からの腐れ縁だし、何より学校を揺るがす大事件も一致団結して乗り越えてきた。もしかして、私はどっちかを好きになったりするのかしら…。年頃のハーマイオニーは、色々と考えを巡らせ始める。

ハリーはなんといってもグリフィンドールの精神を体現したかのような男子。ハーマイオニーもそこは素直に尊敬していただろう。性格も見た目もステータス問題ないし、彼氏としては申し分ない。しかし、節々の行動を見ると、ハリーはあんまり彼女へあんまし関心が無さそうだし、積極的な行動をとってくれない(これは後半のコラムでまた詳しく話そうと思う)。だからいまいち、恋愛までに発展しそうにない。
その点、ロンとは喧嘩ばかりしているが、彼は要所で胸キュンなアクションをしてくれる。
例をあげてみよう。

一巻 嫌われてるかと思ったけれど、トロールに襲われたところを助けてくれた
初期のハーマイオニーは明らかに友達がいない。とりわけ、ロンにはあれこれ辛辣な言葉を浴びせられていた。あーあ、私嫌われてるんだな…思わずトイレで泣いてしまうがり勉女子。そんなところへ襲いかかる巨大なトロール。助けにきてくれたのは…なんと自分を嫌っているはずのロンだった! これは心理的効果が大きいはずだ。もっとも、この時はハリーも一緒だったので、好意は二分されていただろうけど。

二巻 ひどい悪口を言ったマルフォイに呪いをかけてくれた
穢れた血が初出の場面。マルフォイの暴言にぶち切れたロンは彼に呪いをかける。ハーマイオニーからしたら「ロンは私のために怒ってくれたのだ」と思いたくなる。これはとっても胸キュンだ。実際のところ、ロンはハーマイオニーじゃなくても差別用語を出された時点で同じ反応をしそうだけど、それでも嬉しいことには違いない。ちなみに、我らがハリーは横でぼけっと見てただけ。まあ差別用語のことも知らなかったししょーがない。

三巻 いじわる教師に「知ったかぶりめ!」と罵られたところを必死に擁護してくれた
病気のルーピンに代わって防衛術の授業を行うスネイプ。ハーマイオニーは普段の調子でスネイプに知識を披露するも、いじわる教師は彼女を知ったかぶりと糾弾。黙り込んでしまうハーマイオニー。が、ロンはそれに猛然と反論。処罰を食らってしまう。この時のハーマイオニーの心中は描写されていないが、真っ向から自分を擁護してくれたロンの行動が嬉しくないはずはない。これまた大きな胸キュンポイントである。

三巻 精神的に追いつめられた時に優しい言葉をかけてくれた
逆転時計で勉強漬けの毎日、ロンとはスキャバーズの件で大喧嘩、そしてバッグビーグの裁判のためひたすら調べ物……精神的に参ったハーマイオニーはとうとう泣いてしまう。そんな彼女を救ったのがロンの一言。「ハーマイオニー、大丈夫だ。今度は僕達も裁判を手伝うよ」。感極まったハーマイオニーは思わずロンに抱きついてしまう。女の子が弱り切った絶妙なタイミングでナイトぶりを見せるロン。計算ではなく無自覚だからこそ、余計に愛おしさも増すというものだ。

とまあざっとあげただけでもこんな感じ。しかし、いかんせんロンとは普段の仲が悪すぎる。そしてやっぱり、ハーマイオニーを女の子として見ている様子が微塵も無い。ハーマイオニーからすると、やっぱりどっちも恋愛対象としては何だか…な感じだったのではなかろうか。

大きな転機が訪れたのは四巻である。皆さんご存じのクリスマス・ダンスパーティー。ハーマイオニーは三大魔法学校対抗試合のことは知らなかったようだが、ドレスローブを用意させられた時点で、薄々そういう類いのイベントがあるのだろうとは察していたはずだ。
そしてダンスにはパートナーが必須。ハーマイオニーにとって身近な男と言えばハリーかロンだから、どっちかに誘われるかも、くらいの見当は入学前についていたかもしれない。
優等生の彼女からすれば、学校行事はどんなこともおろそかには出来ない。まして女子としての面子が関わってくるイベント。人前でダンスするのに、ダサいままだったら相手に恥をかかせることにもなってしまう。が、年頃の女の子といえ、ハーマイオニーは恋愛経験が豊富ではないし、勉強ばかりで着飾ることにもあまり興味が無い。
ではどうするか。
なんてことはない、お洒落の勉強を始めたのだ。
美は一日にしてならずである。本編において、ハーマイオニーはダンスパーティーで突然美少女に変貌したかのような書き方をされているが、それは違うと思う。実際はパーティーが始まる以前から、ファッションや可愛くなる魔法などについて熱心に勉強をしていたに違いない。新学期が始まった時点で、彼女はもう大分お洒落になっていたのではないか。
基本的に、本編はハリー視点で物語が進む。そして四巻時点のハリーはまだまだ拗らせ童貞のガキンチョである。ただでさえ女子周りへの知識が浅く、そのうえ女の子として認識しているかも怪しいハーマイオニーの変化など、気がつくはずは無かっただろう(実際、ハーマイオニーが医務室で歯を小さくしたことに気がついたのもずっと後、それもロンが指摘したからだった。そう、ロンは気がついたのだ。このあたり、ハーマイオニーを異性として意識しているかいないかの差が出ていると思う)。
また最終的にダンスパートナーになったビクトール・クラムにしても、ハーマイオニーの内面に惹かれていたとはいえ、そこは年頃の男なんだから、多少は外見だって考慮に入れたはずだ。

それにしても可哀想なのはハーマイオニーだ。せっかく万全な準備したのに、二人の童貞は彼女の努力を見事に踏みにじったのである。こいつらほんとねーわ、と呆れたのではなかろうか。

ちなみに私は、ハーマイオニーがハリーへの恋愛感情を喪失したのは四巻だと睨んでいる。それは四巻のラストにおける、彼女の意味深な行動ゆえだ。
そう、ハーマイオニーはハリーに初めてキスをするのだ。ハリーはそのことに対して特に感想も無かったが、ハーマイオニーにとって、これは一つのけじめだったんじゃないかと思う。
四巻のハリーは、ハーマイオニーとの接近イベントが多かったにも関わらず、ことごとくフラグをへし折っている。リータ・スキーターがハーマイオニーをハリーのガールフレンド扱いしたせいで嫌がらせが相次いだが、ハリーはそんな彼女に積極的に庇わなかった(まあ、そんな余裕はハリー本人にもあまり無かっただろうけど)。また、第二の課題でハリーが一番大事に思っていた相手は彼女じゃなくてロンだった。そしてダンスパーティー絡みの一件で、チョウに好意があることもはっきりした。
親友であることは変わりないにせよ、ハリーが自分を異性として見ていないのは、ハーマイオニーにも確信出来たはずだ。
そんなハリーと異なり、ロンは幼稚ながらもハーマイオニーを女性として意識した言動や行動をとる。最悪な言葉選びをしたとはいえ一応ダンスに誘う、彼女が別の男とパートナーになったことに怒る、などなど。ハーマイオニーからすれば理不尽で不愉快だったろうが、ちょっとは喜びもあったかもしれない。少なくともロンは私を異性として意識してくれたんだな、と。だから彼女も「今度はちゃんと自分から誘いなさいよ!」と本音をぶつけたりする。
それに、なんだかんだロンは、大抵ハーマイオニーがこうしてくれたらいいな、という行動を最後にはきちんととってくれるのだ。四巻のラスト、彼はクラムへの認識を改めて、素直にサインを貰おうとした。この時点のハーマイオニーには、それだけで十分だったことだろう。
ちなみに、クラムのことは完全に踏み台としての扱いだったと思う。ハーマイオニーは後年、ジニーにこうアドバイスしている。「いつか好きな人と一緒になれるように、他の人とつき合ってみるべきだ」と。これは彼女自身の経験談だろう。ハーマイオニーにとっては全てが勉強だ。ロンと進展しないのは、自分が恋愛について勉強不足なせいかもしれないと、賢い彼女は考えていたのかもしれない。良好な関係を続けたとはいえ、クラムは男性経験を積むための練習相手に過ぎなかったのだ。哀れ。

さて、五年目を迎えたハーマイオニーは、恋愛面でもすっかり優等生になっていた。何せクィディッチのスーパースターとつき合ったのだから、周囲の女子達も、ハーマイオニーが単なるガリ勉女子では無いと見直したはず。きっと彼女のもとへ押しかけ、色々アドバイスを求めたりしたに違いない。ジニーもその一人だ。
五巻以降の彼女は完全な恋愛強者だ。チョウのハリーに対する好意も早くから見抜いていた。ハリーがずさんなデートをしたことについて、彼女はチョウの心理も含めて見事に解説してみせた。自分をブスと称する余裕すらあった。
ロンとの関係もそこそこ進展している。夏休みの間に、二人はハリー抜きで一緒にいた期間があった。それに揃って監督生にもなったし、二人だけで過ごす機会は以前より増えていたはずだ。ロンの方も香水をプレゼントしてくれたり、より彼女を女性として扱っているのがわかる(ちなみにハーマイオニーのプレゼントは魔法のかかった宿題計画帳。うーん、ちょっとここらへんはセンスを見直すべきでは…)。もっとも、相変わらず恋愛についてガキンチョじみた態度をとるロンには辟易しており、なかなか恋人の関係にまではいたらない。ハーマイオニーにだってプライドがある。自分が好きな男には、やっぱり立派でいてほしいのだ。残念ながら、この時点でまともな恋愛経験ゼロのロンに、ハーマイオニーは満足出来なかったことだろう。二人の恋愛レベルには差がつきすぎていたのだ。

さらなる転機は六年目。妹のジニーがボーイフレンドをとっかえひっかえするようになり、ロンの恋愛コンプレックスは爆発的に増大した。そんなわけで、同じくボーイフレンドのいるハーマイオニーにも憎悪をぶつけてきたりする。ハーマイオニーももうこの頃にはロンが好きなのだとはっきり自覚していただろうけど、正直彼の幼稚さは鼻持ちならない。そんなこんなしているうちに、なんとロンは別の女(ラベンダー・ブラウン)とつき合いだしてしまう。酷い! あなたがクィディッチのレギュラーでいられるように小細工までやったのに! ぶち切れたハーマイオニーは、お返しとばかりクズ野郎のコーマク・マクラーゲンとつき合い出す。
ハリーは「あいつはチームを滅茶苦茶にしたヤツなんだぞ!」などと怒りをぶつけてきたが、彼の主張は的外れもいいところである。ハーマイオニーは冷静に、ロンが一番傷つくであろうアクションを起こしているのだ。恋愛つよつよ女子な彼女は、男をいらつかせる方法もこの時点で学んでいたとみえる。女の復讐に手段など選んでいられないのだ!!
しかし、一連の事件は二人のために必要な試練だったかもしれない。ロンとラベンダーは速攻で別れた。そして彼はこの恋のおかげで多少なりとも女子を理解し、成長した。「愛してるよ」と口にしてくれるようになったし、終盤は寄り添って親密な姿を見せている。

そして七巻。苦難の冒険の果てにホグワーツへ戻ってきたロンが、屋敷しもべ妖精を守るべきだ!と主張する。ハーマイオニーが久しく見ていなかった、ナイトなロン。
ようやく、ロンはハーマイオニーにとっても申し分ない男性になってくれたのだ。
恋愛も勉強。予習・テスト・復習である。ハーマイオニーをお手本に、みんなも恋愛してみよう!!