空の大怪獣ラドン スターの栄光と没落 後編

5、消えたスター ラドンの消息

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一九八四年、ゴジラ映画は復活を遂げた。しかし、肝心の新作は往年の観客を呼び戻すだけの人気を得られなかった。本格的なゴジラシリーズの復活には、さらに五年の時が必要であった。さて、その間、ラドン氏はどうしていたのであろうか。

知られざる空白の時について、ラドン氏は重々しく語り始めた。

ラドン氏「阿蘇山の古巣を捨てて、海外に移住していました。アドノア島っていうところなんですけど、自然が多くていい場所です。餌になる魚も沢山いてね。かつての栄光にも諦めがついて、のんびり暮らしていました。もうここで骨を埋めてもいいかなって。でも、島に居着いて十二、三年目くらいですかね、偶然ラジオでゴジラ映画が再び製作されているのを知りました。最初は信じられなかったですよ。でも、何度か聴いたら本当だとわかって。急に、忘れかけていた役者魂が燃え上がるのを感じました。ゴジラさんや、昔の友人たちにも会いたかった。それで、慌てて日本へ戻ったんです」

6、平成の復活 ゴジラVSメカゴジラ

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しかし、ラドン氏が日本へ到着した時、東宝はもうシリーズ最終作(当時の時点で)を制作に入っていた。それが「ゴジラvsメカゴジラ」である。昭和シリーズ最後の敵であったメカゴジラは、平成シリーズの終焉としても相応しい存在だった。ラドン氏は間に合わなかった。過去の知人と連絡を取り合い、自分を売り込んでみたものの、梨の礫であった。だが、奇跡は起きる。

ラドン氏「僕は諦められなくて、毎日スタジオに顔を出し続けました。そしたらある日、ゴジラさんとばったり出会ったんです。最初は驚きましたよ。何せゴジラさん、新シリーズに入って身長が五十メートルも伸びてたんですから(笑)。ゴジラさんは僕を見かけると、昔と変わらず接してくれました。「おう、ラドン。久々じゃねえか。元気だったか?」って。もう本当に嬉しくてね。泣きながら訴えました。「ゴジラさん、俺もう一度怪獣映画に出たいんだ。それで戻ってきたんだよ」。ゴジラさんはすぐに「わかった。上に掛け合ってやる」と承諾してくれました」

東宝側は、最初ラドン氏の参加を渋った。既にストーリーの骨組みも完成していた。新しくキャストを加えるのは、手間も予算もかかる。しかしゴジラ氏が再三説得を繰り返した。「シリーズの最後なんだから、もっと華々しくやろう。昔のスターが出れば客だって喜ぶ」と。結果、ついに出演が認められた。

ラドン氏「これが最後だと思って、全身全霊で打ち込みました。撮影に入ってからは、東宝さんも協力的になってくれましたよ。「ラドン君、光線を吐いてみないかい?」とか「パワーアップしてファイアーラドンになるのはどうだい?」とかね。

ゴジラさんにも色々気を遣って貰いました。メカゴジラとの最後の対決シーン、当初は一度メカにやられたゴジラさんが、ベビーゴジラの叫びで復活するって流れだったんですけど、現場でゴジラさんが提案してくれたんです。「せっかくだからラドンにもう一つ見せ場を作ってくれよ」って。その結果、僕が命を与えてゴジラさんを復活させる場面になりました。いつもゴジラさんは脇役を立ててくれるんです」

ゴジラ対メカゴジラは大ヒット。これが最終作となるはずだったが、その後もシリーズは「vsスペースゴジラ」「vsデストロイア」が制作され、ついに真の完結を迎えた。ラドン氏も堂々の復活を遂げ、平成におけるスター怪獣の仲間入りを果たしたのである。

ラドン氏「vsメカゴジラが終わった後も、ゴジラさんとは仲良くつき合いを続けてました。撮影中によく言ってくれてたんです。「もうすぐ俺のシリーズは終わりだからよ、次はお前の映画を作ろうぜ。上に話しておくから」。最初は僕も本気にしてなかったんですけど、色々話してたらすっかりその気になってね。ゴジラシリーズが完結する頃には、もう企画がかたまっていたほどです」

しかし、ラドンシリーズが制作されなかったことを、我々ファンは知っている。平成ゴジラシリーズの後に続いたのは、かの平成モスラ三部作だ。そこには、いかなる物語があったのか。

7、宿敵の罠 モスラ三部作

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平成ゴジラシリーズが大団円を迎えた後、ゴジラ・ラドンのコンビは、かねてから暖めていた「ラドン三部作」の構想を東宝へ持ち込む。しかし、そこに現れたのが往年のライバル・モスラ氏であった。彼もまた株式会社インファント興行をバックに、自分のシリーズを売り込もうとしていた。両者の争いは激化の一途を辿ったが、やはり東宝看板怪獣のゴジラ氏を味方にしたラドン氏側が優勢だった。

このままでは勝てないと判断したモスラ氏は、かつて共演したキングギドラ氏を味方に抱き込む。ギドラ氏は金星不動産やキラアク建設、Mハンター商会、Xコンツェルンなど多数のスポンサーを持っており、業界における影響力も非常に大きかったのだ。
ギドラ氏がモスラ氏側についた理由としては、様々な説が語られている。ラドン氏はこう述べた。

ラドン氏「ギドラは平成シリーズにおける自分の扱いが不満だったんです。モスラは平成でもゴジラさんを倒したし、僕は脇役としておいしいポジションを貰えた。それに比べると、ギドラは確かに不遇でした。昭和では怪獣数体がかりでないと倒せない強敵扱いだったのに、vsキングギドラではゴジラさんと一対一、しかも作中で二度も負けてしまうんです。そのうえ、人間の手下でしたからね。映画冒頭でいきなり死体まで晒されてしまうし…。

他にも、これは言いがかりみたいなもんですけど、vsシリーズではギドラの鳴き声が変更されたんです。撮影現場で「お前の金星語はvsシリーズに似合わない」って言われたらしくて。で、代わりに収録された鳴き声が僕のものだったんですよ」

ギドラ氏をバックに得たことで、形勢は逆転した。こうして平成モスラ三部作が制作される。

ラドン氏「確かに残念ではありましたけど、でも、現場はトラブル続きだったらしいですよ」とラドン氏は内情を語る。「ギドラは当然といえば当然ですが、モスラに見返りを要求しました。第一作「モスラ」では、自分の身内であるデスギドラを敵怪獣として出演させ、撮影所でも散々口を出したんです。ラスト、デスギドラがモスラに倒されたシーンでも、デスギドラは死なない設定だから封印される展開にしろ、でなければスポンサーを降りる、とまで言い張ったらしいです。モスラの奴は渋々、承諾するしかなかった。一作目のヒットで、次の「海底の大決戦」はギドラの介入を許さず制作したんですが、肝心の出来がイマイチでした。

結局、三作目では再び制作費をギドラへ頼ることになったんです。ギドラは、一作目を上回る要求をしましたよ。自分を敵怪獣として出演させ、タイトルにも名前を入れるとね。モスラはかなり嫌がってました。ギドラはサイズが大きいから、通常の怪獣三体分のギャラがかかるんです。それがこの三作目では、現代版のギドラと過去版のギドラで、ニ体も登場してます。おまけに恐竜を滅ぼしただの、恐怖の大魔王だの、タイムスリップ出来るだの、無茶苦茶な設定を盛り込みまくったので、ストーリーにも破綻が生じました。予算不足で、セットも満足にたてられなかったらしいです。映画は何とか完成しましたけど、結局二人は喧嘩別れしてしまったんです」

この時におけるモスラ・ギドラ両氏の争いが、後々まで影響を及ぼしたことは間違いない。1999年、ゴジラ映画はミレニアムシリーズとして復活する。怪獣スターの一角として、ギドラ氏やモスラ氏も再びシリーズに出演したが、その扱いは過去作と比べ明らかに劣るものであった。

ラドン氏「ゴジラさんが、新作の撮影を終えた時遊びに来てくれて。「おいラドン、今度の俺の映画見に来いよ。お前きっと溜飲が下がるぜ」って。それが「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」でした。僕はギドラやモスラの出る作品なんて興味なかったんですが、実際劇場で見たらゴジラさんの言うとおり、もう小気味よかったですね。モスラはゴジラさんの熱線であっさり炎上するし、ギドラに至っては最初飛ぶことすら出来ないしで…とても往年のスター怪獣とは思えない扱いでした。ざまあみろって感じましたよ。恐らく、モスラ三部作で二人の争いに散々悩まされた東宝の仕返しだったんでしょうね」

8、新たなる栄光

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さて、ミレニアムシリーズ最終作「ゴジラ FINAL WARS」では、ラドン氏にもオファーがかかっていた。

ラドン氏「もう怪獣映画は引退したつもりだったんですが、東宝さんはアンギラスやヘドラとか、懐かしい顔ぶれにも声をかけてまして。僕もみんなに会いたかったので出演しました。記念になると思ってね。かっこいいシーンも用意して貰ったし、満足でしたよ。色んな経験をして、僕も物事を達観できるようにんあったんです。機会があれば、ファンの期待に応える、今後もそういうスタンスでいいかなって」

そんな彼が久々にスクリーンで復活を遂げた。それが最新作「キング オブ モンスターズ」である。しかもそのキャストは、往年の「地球最大の決戦」と同じであった。かつてのライバルと競演することに対し、ラドン氏はどのような思いを抱いたのであろうか。

ラドン氏「もう昔のことは気にしてないですよ。あいつら(モスラとギドラ)も僕と同じように、成功もしたし失敗もした。そういう経験は誰にとってもかけがえのない宝です。一緒にいい映画を作ろう、そういう気持ちだけですね。今あるのは」

成功と挫折を経た結果であろう、ラドン氏の表情は穏やかであった。これからも、彼は怪獣スターとして輝き続けることであろう。ファンは是非、彼の新たなる勇姿を新作で見届けて欲しい。

…ごまスリクソバード? 何のことかな?