もっと明るく 明光書店奮闘記

中国現代文学(21) (チュウゴクゲンダイブンガク) [ 中国現代文学翻訳会 ]

価格:2,200円
(2020/4/11 22:19時点)
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張抗抗の中編現代小説。
街の古き良き小さな書店、明光書店は経営危機に立たされていた。ネット通販による書籍価格の下落、電子書籍の流通、読者の減少……。苦悩する女性店主の廬娜が、最後に下した決断とは……。

日本ではどんどん書店が倒れていく。お隣の中国はどうだろうか? これが実にそっくり。表紙だけを撮影して家に帰ってからネットで安く本を買う若者、店を維持するためカフェを経営したり文具を販売する、返品や輸送でコストばかりがかさみ売り上げが残らない、などなど、日本の書店でもよく耳にするエピソードがちらほら。もう涙がでるほど共感してしまう。
本に理解を示さない人々も日本と同じ。服やバッグならいくらでも買う金持ちが、本にはまったく金を出さない。たまに出したかと思ったら、それは自分をインテリに見せるファッションとしての購入で、本を読む気はさらさらない。政府や行政は、土地を買ってビルを建てることに投資しても、苦しんでいる書店を助けてはくれない。

そんな状況だからこそ、本を心から愛している人達のエピソードが心に染みる。時勢は書店を次々に潰していくけれど、それでも本好きの読者がいなくなることはない。
ラストのやり取りもとてもいい。中盤、廬娜は「书(shu:本)」は「输(shu:負け)」と読めるから、書店を営むのは負け商売だと考える。けれど彼女の夫は言う。「始皇帝は書物を焼いたけど、その悪行は書物によって後世にまで残った。書物に負かされたのだ、結局は書が強いのだ」と…。読書の苦手な夫が、こんな励ましをしてくれたというのがまたいい。

そのほかにも見所あり。書店の物語だけあって、作中では度々名著のタイトルが出てくる。特に日本で翻訳されていない本には興味をそそられた。また、賄賂じみた手段で売れ筋本の情報をゲットする廬娜、昔は仕官するために書物が必要だったから本が売れたのだ、という台詞など、中国らしいエピソードも沢山あって面白い。

本と書店をとりまく人々に、是非読んで欲しい傑作。

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