水滸伝 98年ドラマ版

水滸伝 中国大型歴史名作連続ドラマ 日本語字幕全43集DVD8枚

価格:12,210円
(2021/10/3 19:45時点)
感想(1件)

中央電視台が西遊記、紅楼夢、三国演義に続く四大名著のトリとして制作。全四十三話。
それまでの三作同様、人、金、作品愛が詰め込まれておりまさに傑作のドラマ。アクションはCGだらけになる2000年代の前ということもあってか全部生身、かつ大味なワイヤーアクションも控えめと、非常に硬派で見応えがある。原作同様、得物や戦い方でキャラクターに個性を持たせており、映像でもそれがきちんとわかるようになっているのはとても嬉しい。
物語は百回本をなぞっているが、現代人の倫理観に沿うよう豪傑達の行動や思想が大分改編されている。例えば原作の李逵は特に理由が無くても人を殺しまくるキラーモンスターだったが、ドラマではほぼ無用の殺しはしない。宋江や呉用も仲間を引き入れるために外道な作戦を実行しないし、武松も楊雄も浮気女の腹をかっさばいて中身を引きずり出したりしない。そういうわけで、とても安心して見られる作品になっている。また中央電視台作品制作の特徴の一つとして、演義や紅楼夢と同じく、原作のファンタジー要素は軒並み取り払われている。物語が地に足ついたリアルな作風になった反面、公孫勝など一部の魔法使いキャラは出番が失われてしまった。
物語はかなり圧縮されており、特に祝家荘編あたりから大きく巻きが入る。百八星はいつの間にか仲間入りしてる連中がいて混乱する。気がついたら全員揃っていきなり方臘戦。百二十回本好きとしては寂しい限りだが、現実味な作風の本作としては、遼をぶっ潰したり百八星が誰も死なない、なんて展開はやはり不自然だったかも。
そしてもっとも印象深い改編が女性キャラ方面。水滸伝の女性は、豪傑を陥れる藩金蓮や閻婆惜などの悪女、単に性別を反転させただけで中身はまるきり男な扈三娘など、物語の中ではあまりいい扱いはされていない。しかしドラマ版は女性の扱いに大変気を遣っている。藩金蓮なんて武松を置いてけぼりにして完全にドラマの主役。悪女どころか不自由な男社会のせいで苦しむ悲劇の女性である。扈三娘は原作ですっ飛ばされた婚礼の詳しいエピソードがあるし、招安の道具扱いだった李師師は燕青との濃い恋愛物語が描かれるし、百八星の中には名前しか出てこないキャラもいる中、女性はオリキャラまで出てくる。ビジュアルにも配慮してるのか、みんな美人でしかもタイプが被らない。
反面、百八星の扱いは上述したストーリーの圧縮もあって結構雑。地慧星はもとより、天罡星でもろくに出てこない奴がちらほらいる。キャラクターがあってこその水滸伝だけに、ひいきの豪傑が出番を削られたりするのは結構悲しい。三国演義ではたっぷり八十話もやったのだから、本作ももう少し物語を伸ばし、そのあたりを何とかして欲しかった。省略といえば敵キャラも同じで、方臘戦では原作で梁山泊の豪傑を何人も殺した石宝、包道乙・鄭彪コンビが出てこなかったのは残念。
その他、音楽や衣装、撮影技法などについては四大名著でも最後に作られただけあって文句なし。まあ、それでもちょこちょこやる気無いエキストラがいたり写っちゃいけないものが写ってるのは大陸クオリティですが…。
ともあれ、水滸伝ドラマとしては随一の傑作だと思うので、ファンなら必ず見ておくべし。

キャスト一覧(順番はテキトーです。多すぎるので、書きたいことがあるキャラだけ)
宋江/李雪健
風采のあがらない、うさんくさそうな風貌がいかにも宋江っぽくて好き(褒めてます)。原作の悪行は大分取り払われているはずなのに、ドラマはドラマで大分ダメダメなキャラになってしまうあたりがいかにも彼らしい(褒めてます)。武器担いでる姿が全然似合わないし、強そうな敵と出くわせば即座に背中見せるし、やることなすこと見通しが甘いし、まあ原作通りである(褒めてます)。耳障りの悪いだみ声はわざわざ声優さんを起用している。
原作の水滸伝はダメなおっさんが忠義を貫き仲間と供に英名を遺す、バッドなハッピーエンドとしてまとめられているけれど、本作は無常観に満ちた悲劇として幕を閉じる。それだけに、彼と死を共にする李逵や花栄の最期がより感動的に感じる。

林冲/周野芒
魯智深から序盤の主役を引き継ぐ。悲劇が濃密に描かれておりとっても良い。アクションも正統派なかっこよさがあって素晴らしい。原作と異なり、高俅への復讐を果たせなかった悲憤で招安直後に死んでしまう。でも彼の心情を考えると凄く納得出来る展開。

武松/丁海峰
中盤の主役。凶暴さはややなりを潜めて、見ていて安心出来る好漢に。打虎の場面は一部で本物の虎が使われた命がけの撮影!!いや、そういう方面で無駄に気合い入れなくても…。招安には反対しながらも最後まで残留し、林冲や魯智深を失った梁山泊で最強の使い手として活躍。大事な仲間を次々に失う中、狂ったように戦う姿は壮絶。

魯智深/臧金生
序盤の主役。ビジュアル満点でまさに本からそのまま飛び出してきた感じ。原作より色んな意味で気が遣えて大人。禅杖アクションが最高。これまた招安直後に離脱。

李逵/赵小锐
原作の凶暴さはすっかり取り払われ、宋江アニキ大好きな可愛い忠犬キャラになっている。役どころは完全に梁山泊のアイドル。戦闘では斧をぶんぶん振り回し無双する。終盤にはラブストーリーまである。あまりにもまともになり過ぎているので、こんなの李逵じゃない!と怒るファンもいるかもしれない。

呉用/宁晓志
ほぼ原作通りで足し引き無し。宋江の腹心として彼を支える。宋江のだめっぷりを認識しつつもそのまま放置しておくあたり、一番腹黒なキャラなんじゃないかと思う。

花栄/修庆
梁山泊最強の弓使い。原作通り美男設定で、イケメン枠を欲しいままにしている。弓だけでなく双槍で接近戦もお手の物。

関勝/李振起
梁山泊最強キャラの一角なのにまったく出てこない…かと思ったら最終回の褒賞場面でひょっこり登場。雑過ぎィ! 大陸だと人気無いキャラなのかな…?

呼延灼/贾石头
お髭がチャームポイント。梁山泊強キャラの一角だが出番が後半なこともあってか活躍が少ない。

秦明/王文升
いつの間にかいた。原作の仲間入りエピソードが色々アレなので見事に省かれてしまった。強キャラ枠の筈だが一騎打ちだといいとこがない。

公孫勝/汪永贵
リアル作風なのでいかんせん道術使いの出番が無く、存在感が無いただの乱暴道士。方臘戦前にひっそりと去ってしまう。

阮小二/刘卫华・阮小五/张衡平・阮小七/李冬果
阮氏三兄弟。序盤からの登場もあって出番に恵まれている。陸でも普通に強い。小二と小五の最期は惨い。あーあー、あーあーあー。小七さんは猿顔でちょっとオッサンぽい。

史進/郭军
序盤に登場しその後まったく出てこない。えぇ…。

戴宗/王基明
原作はお遣いキャラとして出番に恵まれていたがドラマでは印象的なエピソードが削られ目立たず。

楊志/翟乃社
踏んだり蹴ったりの不運マン。招安で素直に喜ぶ姿を見せた数少ない(?)キャラ。こういうところもきちんと演出してくれるのは嬉しい限り。

楊雄/陈之辉
初っぱなから不良どもにボコられ、妻の浮気には気づかず、と情けないシーンが続いたせいか原作と異なり徐寧との交渉役に選ばれる。方臘戦ではまったく画面にうつらずいつの間にか戦死していた。しくしく。

石秀/杨凡
原作通りのデキる男。棒術アクションが素敵。盧俊義救出シーンが最大の見せ場か。方臘戦では義兄同様活躍が描かれないまま死亡。しくしく。

盧俊義/王卫国
これまた宋江と同様、かっこよくなれない人。一応、原作に比べるとそれなりに副リーダーをやっている。奥さんへの仕打ち酷すぎんか?

燕青/王光辉
後半登場では数少ない、しっかり出番と物語が練られている豪傑。李逵とのコンビは微笑ましい。豪傑の中では数少ないハッピーエンドだったのが嬉しかった。

徐寧/张巍
誘拐されて強引に仲間入り。原作ではもっと酷い勧誘方法があったはずなんだけど、映像で見せられるとこのレベルでもやり口が酷いと思ってしまう笑 本人の活躍も対呼延灼戦がハイライトなのでその後は目立たない。奥さんが可愛い。

張順/张亚坤・張横/兰恭英
張順は原作以上に壮絶な死に方。これはこれでいい感じ。ファンタジー要素が削られたので残念ながら神様としての活躍は無し。とはいえ張横がきっちり仇をとってくれる。

王英/许敬义
何かと女性陣が優遇されている本作なので、扈三娘の夫というポジションのおかげか出番・活躍多め。演員さんも特徴あるビジュアルで可愛い。水滸伝の豪傑といえば女色を遠ざける硬派な連中ばかりなのだけれど、きちんと憎めない女好きに描かれており、シリアスな展開が続く後半は夫婦のいちゃいちゃに癒やされる。

扈三娘/郑爽
梁山泊のヤンキー娘。サバサバした性格が強調され、大幅に個性が増した。婚礼初夜のエピソードもあり、原作の違和感がある程度払拭されている。アクションもうまい。

孫二娘/梁丽
面倒見のいい梁山泊のおかみさん。時折見せる主婦らしさが素敵。武松との関係がとっても印象深い。彼を庇って死んだ後の、武松の「姉さん!」の叫びの悲痛なことよ…。

時遷/孟耿成
地煞星の中ではトップクラスにいい扱いを受けている。やっぱ人気なんだなぁ。盗人らしさを随所に出した仕草が見事。徐家への潜入シーンは白眉。もともと盗人なので武力は低いんだけど、素早さを生かしたトリッキーな戦い方を見せてくれてこれがまたカッコイイ。

晁盖/张治中
梁山泊の二代目首領。宋江とは違う形で老残泊の未来を案じていた。もっと深掘りしてくれたら面白くなった気もするけど、原作通り志半ばで退場。

藩金蓮/王思懿
中盤の花。武松すらそっちのけでお話の中心に居座っている。いかにも庶民的な奥さん、な感じのビジュアルが素晴らしい。単純な悪女では無く、色んなことが重なった結果無残な末路になってしまったのがひたすら哀れ。

武大郎/宋文华
金蓮の夫。外面は真面目な男だけど、旦那としての優しさとかに欠けてて金蓮が密かに不満を抱くのもしょうがないかな、と思ってしまった。

藩巧雲/牛莉
楊雄の妻。名女優・牛莉さんが演じている。濡れ場がエロすぎです。最高です。堂々と悪女していて、むしろ楊雄の情けなさが際立つ。

李師師/何晴
北京の名妓。演じるはスーパー古装女優の何晴さん。本作の出演で四大名著をコンプリートしている。素晴らしく美しい。酒を飲む時や笑う時の上品な仕草も細やかでまさに名妓な感じ。金蓮や巧雲が素晴らしい濡れ場を披露してくれたので、燕青誘惑シーンにも大変期待してたのに上着一枚脱いでくれなかった。ちっ。オリジナルエピソードして、燕青との恋物語が追加され、まさかのハッピーエンドを迎える。とってもいい改編。

方臘/崔岱
ラスボス。宋江とは運命の分かれた鏡のような存在。器量・カリスマ明らかに宋江より上な人物として描かれている。

龐万春/伍松
原作では方臘配下の中クラス武将だったが、本作では他のキャラがリストラされた分出番が増えている。燕青らと友情を育みながらも敵対してしまう。最後は阮氏兄弟と死闘を繰り広げ、カンフー映画のボスキャラ並みにオーバーキルされてしまった。

龐秋霞/张春燕
龐万春の妹。誰……?と思う方もいるだろう。ドラマオリジナルキャラである。石宝とか包道乙を出して欲しかったのに~と思いつつ美人なキャラなので許す。お肌がめっちゃつやつやで麗しい(どこ見とんねん)。

高俅(老年)/魏宗万・(青年)/修革
梁山泊の真の宿敵。誰得なのか、本作は彼の若い頃のエピソードから始まる。胸糞(笑)。わざわざ青年・老年の二役が用意されるなどいい扱い。

その他
張清・董平…原作でも活躍があった天罡星なのにいっさい出ません。あ、あんまりだ。地煞星も私が好きな欧鵬や郭靖・呂方コンビはじめ、孔兄弟、楊林、孟康、段景住など一切出てこないキャラ、もしくはいつの間にかフェードアウトしてしまうキャラは結構多い。まあ、原作自体の問題でもあるからしょーがないんだけど。

名場面
・一話 王進、高俅を打ちのめす
仲間の不良とともに道ばたで出会った大道芸人をボコボコにしていた高俅だが、そこへ通りかかった禁軍教頭の王進からボコボコにされる。高俅は復讐を誓い、権力者への道を歩むのだが…。王進の戦闘シーンでかかる「王進打高俅」は水滸伝全編を通して流れる印象深いテーマ。それにしても王進がこんなに目立つとは思わなかった。

・十五話~十九話 報われぬ恋心の果て
藩金蓮と武兄弟のお話。なんとここだけで五話も省いている。四十三話中の五話だから相当のボリューム。制作陣の気合いの入れようがわかる。しかしお話の雰囲気とか画面の演出とか、もはや水滸伝では無くて殆ど張芸謀映画の雰囲気。封建主義社会における女性の悲劇譚である。いっそスピンオフとかでやった方が良かったんじゃ無かろうか…。

・四十~四十二話 方臘戦
招安後の方臘討伐。弓で針鼠、石臼の下敷き、竹槍で串刺し、鉄鋏に捕まる……などなど壮絶な最期を告げていく豪傑達。方臘軍のバラエティ溢れるトラップが凄い。血で血を洗う戦いには鳥肌立ちっぱなし。改編部分も多く、原作では生き延びたのにドラマでは死んでしまった豪傑もいる。
気になるのは画面に殆ど同じキャラばかりがうつること。そして全く活躍が無いままいつの間にか戦死しているキャラがいること。最後の大戦なんだから、そこはきちんと全員見せ場を作って欲しかったと思う。

・四十三話 夢のあと…
生き残った豪傑達はそれぞれの道へ。ある者は梁山泊へ登る前の生活に、ある者は幸せや平穏を手に旅立ち、ある者は官吏に…。そして宋江は…。
後半以降、巻きが凄かったものの梁山泊の最期はじっくり時間をかけて描いている。余韻の残るラストが素晴らしい。

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