古装ドラマ「三言二拍」1993年版より「卖油郎独占花魁」

1993年の大陸ドラマ。
中国明代の短編小説集「三言二拍」が原作。「三言二拍」は二百話もあるのでさすがに全話を映像化は難しかったのか、いくつか代表的なものをピックアップ。
今回紹介するのはそのうちの一話「卖油郎独占花魁」。「三言二拍」でも特に有名な作品。

あらすじ
北宋年間。靖康の変で難民となった莘瑶琴は親ともはぐれ、臨安の妓楼へ売られてしまう。王美娘と名を改め、数年後には売れっ子妓女として名をはせるのだった。
一方、同じく戦乱を逃れてきた少年、秦重も臨安の油屋で働いていた。ある日、下女の蘭花との密通を疑われて店を追い出されてしまい、以後は独立して油を売り歩く。そんな時、秦重は妓楼の前を通りかかって王美娘の姿を見かける。世にもまれな美しさを持ち、同郷でもある美娘に心を動かされた秦重。しかし美娘と遊ぶには十両もの大金が必要。一念発起した秦重は、数年かけてお金をため、彼女に会おうとするが…。

「卖油郎独占花魁」の映像化作品は、以前もレビューしたんだけど(愛情宝典「売油郎」)、こちらはさらに年代が古く、原作をより忠実に再現。美娘も朱重もちゃんと幼少期のエピソードが語られ、その悲惨な境遇ぶりには思わず涙。
特にいいのが画面全体にあふれる生活感のある描写。汚れた感じの町並みとか、貧乏くさい部屋の造りとか、兵から逃れてぼろぼろになって放浪し田んぼの青い大根をかじる姿とか、お湯をかけるだけの体洗いとか、酒楼の店員の細かな仕草とか(肩にかけたタオルで口を拭いたり、お客と相伴したり)。衣装も変にキラキラしていなくていい感じ。昔の時代の空気をとてもうまく再現している。こういうの、むしろ今時の古装ドラマでは出来なくなってる部分では。「夢華録」とかで感じた違和感はこれなんだろうなあ。無駄にお洒落な方向を意識しすぎて、汚さとか素朴さとかを無視しているというか。

古き良き古装ドラマなので、古典作品が好きな方は是非。

キャスト
秦重/杨天
善良な油売り青年。数年かけて小銭をためて美娘に会い、真心ある対応で彼女の心を開く。後、真面目な働きぶりでお金持ちになる。

王美娘(莘瑶琴)/竺慧丽
臨安の名妓。妓楼暮らしが長引くにつれ、やや拗れた女性になってしまう。こっそり隠していたお金を女将に奪われてお客に泣きつく場面は、原作には無いけれど妓女っぽさを感じて好き。あと、ゲロシーンがリアルすぎ。

八公子/章建新
臨安のお金持ち。美娘を無理矢理身請けしようとする。成敗されないのですっきりしない。

王九妈/梁凤英
臨安の廓の女将。瑶琴を引き取って妓女に育てる。実の娘分として可愛がりつつも、金のことが絡むと容赦が無い。

刘四妈/王延珍
王九妈の友人。お客をとることを嫌がる美娘を理詰めで説得する。

朱十老/王伯伦
秦重の養父。根はいい人間だが、秦重が下女の蘭花と密通していると疑い、追い出してしまう。

邢权/吕士刚
朱十老の店で働く青年。真面目な秦重が重用されていることに嫉妬する。

兰花/臧修逸
朱十老の店で働く下女。若い秦重へ熱心なアタックをかけるが二度も拒否される。ちょっと可哀想。原作ではブス設定だったが、ドラマの女優さんはそれなりに綺麗な感じだけど。