
文芸サークル「行雲流水」発行の同人誌。著者は添田健一。
中国古典小説におけるメジャージャンルの一つ、志怪小説についてその源流である六朝時代を中心に解説。なお、書中の語り部として、同じく添田さん作の小説「墨妖」のヒロイン・子霞さんが登場している。
さらっとした中国文学史だと、突然六朝期に生えてきたかのように感じられてしまう志怪小説。それがどのような流れで生まれ、発展したかがわかりやすく紹介されている。説明の導入で選出される人物も日本人にも馴染み深い三国志系列や陶淵明あたりなので、六朝時代に詳しくなくてもスムーズに話を理解できる点が素晴らしい。
取り上げられている物語は、音楽・妖怪・恋愛・桃源郷とバラエティ豊か(それが志怪の特徴だから当たり前だろと言われたらそうなんだけど)。六朝志怪は黎明期ゆえに大半が素朴なお話なので、中国文学に慣れてなくても気軽に読めるのも良いところ。
個人的に李奇の大蛇討伐、干宝の侍女のエピソードが面白かった。私も六朝志怪は一通り読んだんだけど何せ収録されたお話の数が多いので普通に半分近く忘れてる。前者は拙著「中国古典侠女列伝」に入れそびれてしまったのが悔しい。志怪ジャンルは結構戦う女性のお話が多い(清代になるけど、聊斎志異の「侠女」とか「武技」とかね。当時の認識だとそういう女性って非日常的で不思議な存在だったのだろう)。後者に出てくる死んだ父と十年も同葬されてた侍女、生きてたのはともかく隣に転がってる遺体の臭いがマジできつかったんではないかと思った(どーでもいい)。中国は土葬だからね…。
おまけ程度ではあるが、唐の伝奇小説、明清の代表的な志怪小説のタイトルも紹介されている。
もっと志怪小説が読みたくなる名作なので、興味のある方はぜひ。