
現代の神話とも呼ばれる「スター・ウォーズ」シリーズ。
映画旧三部作の終了後も、ノベル・ゲーム・コミック展開によるスピンオフ作品でエピソード6以降の歴史が紡がれ、新共和国の設立、帝国残党や未知の敵との戦い、ルーク・スカイウォーカーのジェダイ騎士団復興など、その世界観と物語はエクスパンデッド・ユニバース、通称EUとして拡張を続けた(現在ではレジェンズと呼ばれているが、古参オタなのであえてこう呼ばせてください)。
本記事で紹介する小説「ニュー・ジェダイ・オーダー」シリーズ(以下NJOと略す)はちょうど新三部作の公開時期であった1999~2003年に刊行され、それまでのスピンオフ作品の総決算ともいえる壮大な物語となった。原書にて全19冊、翻訳では全21冊にも渡る(2冊多いのは長大な原書を分冊して刊行したものが2作あるため)。ディズニーによるシークエル三部作が作られる前は、このNJOの設定や物語が新作でも用いられるのではと、ファンの間でも評判になっていた印象深いシリーズなのである。
しかし現在、ネットを見回しても日本でNJOについて語っている記事やサイトは殆ど存在しない。なので、私自身の備忘録も兼ねて本シリーズの紹介から魅力、考察含めてまとめて語っていこうと思う。
長いので全三回に分けてお送りします。よろしければどうぞご覧ください。
シリーズの概要
エピソードⅣから25年後。帝国を打倒して設立された新共和国と、帝国残党の間で和平協定が結ばれ6年余り、小さな事件はありつつも銀河は概ね平和を保っていた。しかし、別銀河からの侵略者ユージャン・ヴォングが突如襲来。彼らは機械文明を憎み、未知の神を信仰し、そして何よりフォースが一切通じないエイリアンだった。新共和国は反乱軍時代の英雄が軒並み引退し、元老院も元首のボースク・フェイリャを筆頭に堕落気味。ルーク率いるニュー・ジェダイ・オーダーも、手探りで再建された弊害から守護者としてのあり方をめぐって派閥争いが起きている。果たして、銀河はこの新たなる脅威を乗り越えられるのか…というのが大まかな内容。
シリーズの魅力
・敵が強大
NJO以前のスピンオフは、基本的に帝国の残党やダーク・ジェダイが敵であり、これらではどうしても映画シリーズの帝国を上回る脅威になり得なかった(※1)。しかし、本シリーズのユージャン・ヴォングは別銀河からの侵略者というインパクト、凄まじいスケールの軍勢、また既知銀河とは相容れない文明思想(機械を憎む、兵器から日用品に至るまで全てが生き物で出来ている、独自な神々への信仰、フォースが一切通じない)など、これまでのスピンオフには無い新しさがあった。
ちょっと褒めすぎかもだが、スピンオフで唯一、映画シリーズのパルパティーンと帝国に匹敵する強大な敵を描くのに成功していると思う。
※1 パルパティーン復活とか、既知銀河内の未知の敵とか、古代シスの悪霊とか、惑星をお手軽に破壊できる超兵器とか、頑張ってはいるんだけどやはり後付け作品にありがちなスケールの縮小感は否めない。
・壮大なスケール感
ユージャン・ヴォングとの戦争は延べ五年、戦いの影響も銀河全体に及ぶ。映画シリーズはもちろんこれまでのスピンオフも含む沢山の惑星が舞台となる。つぎ込まれる戦力や死者数もスター・ウォーズシリーズ屈指で、まさに大戦争といった感じ。かつてない危機に直面し、それまで敵ポジションだった帝国の残党やハットなどと協力する展開も熱い。
・ルーク率いる新生ジェダイ騎士団
ディズニーのシークエル三部作と異なり、ルークはジェダイ騎士団の復興に概ね成功している。全部で百人程度しかいない小規模組織だが、それでも銀河の守護者として人々に広く認知されている。面白いのは、ルーク自身手探りで組織を作ってきたので旧共和国時代と色々な違いがあること。例えば結婚や出産が可能(ルーク曰く「家族や愛はジェダイを強くするから」)、指導はアカデミー制(後に旧時代と同じく個別指導も取り入れる)、旧共和国時代の教えが失われたためフォースをめぐる思想的対立や派閥が存在する、などなど。
フォースの通じないユージャン・ヴォングを前にして、作中におけるジェダイ達が改めて「フォースとは何か」という問答に向き合い、これがシリーズ通してのテーマにもなっている。他にもハン・ソロとレイア・オーガナの子供であるジェイナ、ジェイセン、アナキンを筆頭に、新世代の若いキャラクター達が主役格として活躍する。本シリーズは彼らの成長物語でもある。
・過去のスピンオフの総決算
上述した通り、映画終了後にスピンオフ作品の積み上げがあり、このNJOではそうした過去作品のキャラ・舞台・兵器がちょくちょく顔を出す総決算的なシリーズになっている。これまでスピンオフを読んできたファンには嬉しいサービスだが、中には雑に殺されたりろくに出番を与えられなかったキャラも多く、賛否両論分かれるところ(ここらへんは後半の考察でまた詳しく)。
そのほか設定関連
本作の時系列は、エピソードⅣにおけるヤヴィンの戦いから約25年後が舞台。
反乱軍は新共和国となり銀河の大半を掌握している。首都はもちろんコルサント。元老院システムも復活し、概ね統治形態は旧共和国と同じだが、そのせいで個々の惑星・民族同士が自分たちの利益を優先して足を引っ張り合うデメリットも蘇ってしまった。またハット、ヘイピーズ、チスのように新共和国成立後も独立を維持している種族もいる。
軍事に関しては正規軍が存在。反乱軍時代の戦艦・戦闘機を運用しているほか、帝国から拿捕したスター・デストロイヤーも用いている(なんなら新しく作ってたりもする)。敵国の軍事シンボルをそのまま使うってどうなの…とは思うけど、パルパティーン死後も強力な軍勢を保持していた帝国残党と渡り合うためにやむを得なかったという事情がある。メタ的な理由を言えばスターデストロイヤーはスターウォーズの顔でもあるので作中から抹消したくなかったのだろう。Xウイングをはじめとする主力戦闘機はシークエル三部作のように世代更新されており、作中でも最新鋭機のXJ型が活躍している。
全巻紹介・感想(感想はネタバレ全開なので伏せ表示です。ご注意ください)
新たなる脅威(原題:Vector Prime)
帝国を打倒し、概ね平和を取り戻していた銀河系。しかし銀河の端にあるアウター・リムでは、別銀河からの侵略者ユージャン・ヴォングの先遣隊が押し寄せていた。彼らはあらかじめ各地にスパイを送り込み、惑星同士の紛争を扇動して新共和国の目を侵略から反らしていた。未知の敵と遭遇したルークたちは初陣で辛くも勝利をおさめるが、とてつもなく大きな犠牲を払うのだった…。
・シリーズ第一作。チューバッカ死す。スピンオフで映画のレギュラーキャラが死亡する衝撃展開(脇役であれば過去でもモン・モスマのように死亡例はあった)。これにより終盤まで映画キャラが死ぬかもしれないという緊張感が持続した。チューバッカが選ばれたのは消去法でいくと妥当なラインだとは思う。興味深いことにディズニーのシークエルではそのチューバッカが生き残りルークやレイアが死ぬ真逆の展開になったのだが。
・ルークの妻マラ・ジェイドの病やノム・アノアの活動は本作以前のコミックが初出(未邦訳)。そのため本作から入った読者には唐突に感じるかも。出来れば巻末の解説とかで補完してほしかったところ。
・辺境惑星ベルケイドンがユージャン・ヴォングの生物兵器で汚染され、観測基地の隊員が一人ずつ殺されていく場面はなかなか緊迫感あり。もっとも、どこぞのパニック映画で見たことあるような展開ではある笑
・偶然揃って辺境地帯にやってきて、偶然侵略軍と遭遇して戦う羽目になるスカイウォーカー・ソロファミリー。話の都合上しょうがないとはいえ、やはり気になる。
・40代になっているルークはさすがに風格があり言動・行動安心して見ていられる。そのぶん、ハンとレイアの子供であるソロ三姉弟が成長要素のある未熟な若者として活躍。ハンに似て勝ち気なジェイナ、シニカルなジェイセン、素直だがやや短絡的な思考のアナキンと、それぞれ個性あり。またアナキンは自分のせいでチューバッカが死んだという負い目から、ひたすらジェダイの高みを目指そうとする。
・ルークと対立し過激派派閥のジェダイを率いるキップ・デュロンはスピンオフでも古参のキャラ。ルークをも凌ぐフォースの持ち主で優れた戦士だが、その設定ゆえか噛ませに回ることも多く、本作ではジェイナに小惑星帯のレースでぼろ負け、自分の中隊も全滅とまるでいいところが無かった。他にも、未知の生物兵器を使ってきたユージャン・ヴォングをあろうことか密輸業者集団と誤認するミコ・レグリアや、余計な手出しをして外交任務をおじゃんにしたワース・スキダーなど、若手ジェダイは問題児ばかり。そんな有様なので元老院にもジェダイ否定派が大勢いる。NJOが刊行されたのはちょうどエピソード1公開後なので、旧共和国の強くてストイックなジェダイと比較すると余計にだめっぷりが際立つ。一方で、こっちの方が人間くさくて好きというファンもいるだろう。
・本シリーズにおけるヒロインの一人であるダニ・クイー。日本のエンタメだと科学者キャラって守られ役になりがちだけど、ダニはかなり意思が強い武闘派。というか沢山女性キャラが出てくるのに、マラもジェイナもレイアもみーんな似たような属性。アメリカって外も中もマッチョなヒロイン好きだよなぁ。
・カバーアートは映画レギュラーのメンバーと、ユージャン・ヴォング側の主役人物であるノム・アノア。本シリーズのルークは髪型がオールバックに描かれ渋みのある大人な雰囲気。私的にはかなり好きなアレンジ。
暗黒の潮流(原題:Dark Tide I: Onslaught)
ユージャン・ヴォング侵略軍の次なる攻撃準備がアウターリムで密かに進んでいた。ルークは全ジェダイを召集するも、フォースの通じない敵といかに戦うべきかで皆の意見は割れる。レイアも元老院へ復帰したが、政界の要人達は平和慣れしており、一部を除いて新たな脅威には無関心だった。内部に敵を抱えた状態で、新共和国の苦しい戦いが続く……。
・前作に引き続き導入の章。ルークのジェダイ騎士団はわずか百人しかいないため、銀河規模の危機には対処が困難。新共和国軍もヴェッジやアクバーをはじめとする反乱軍時代の英雄が軒並み引退。ハンはチューバッカの死で無気力。レイアが元首をやめた後の元老院も腐敗気味と、とにかく味方側が不穏な状況。
・ルークとともに占領されたベルケイドンに潜入したジェイセンは、フォースがもたらしてくれたビジョンを信じてユージャン・ヴォングの戦士に戦いを挑むも、ボロ負けして捕まってしまう。そんなジェイセンの救出に颯爽と現れたルーク。二本のライトセーバーをきらめかせて華麗に戦う。が、数人ばかり倒したところで早くも息切れ。後半でも敵の巨大生物兵器ラカマットをフォースのテレキネシスを用いたコンバットで倒すが、それによって昏睡状態に。味方側の最大戦力であるルークの限界を描くことで敵の強大さを強調したかったのはわかるが、読んでるとやっぱりガッカリ感が強い。執筆陣も思うところがあったのか、シリーズ後半で「ルークは暗黒面への恐れから常に必要以上にフォースを制御して戦っているため疲労しやすい」と後付説明がされた。
・アナキン・ソロはマラの病気療養の旅に付き添い、その中で必要以上にフォースを使わない訓練をする。幼い頃からフォースが当たり前の存在だからこそ、フォースを使わない者の立場を知らなければならい、ということ。ちょっと説明くさいけど良い場面。
・新共和国最強のXウイング部隊・ローグ中隊が登場。現在の隊長はギャヴィン・ダークライター。しかし本作で多くのパイロットを失い、次作でもまた半数が撃墜されてしまう。まあ相手が悪いんだけど、ちょっと損な役をさせられている。さらにシリーズ後半では、ジェダイやチスの優れた中隊が出てくるので、新共和国最強の肩書きも霞みがち。戦闘機同士の戦いでは共和国もヴォングも互いにどんどん新たな戦術を生み出していき、基本的に実力は拮抗。このせめぎ合いも見所の一つ。
・もとローグ中隊のジェダイ騎士コラン・ホーンはかなりヒーロー然とした頼れる大人キャラ。これまたストイックな旧共和国のジェダイ騎士団ではなかなかいないタイプ。結婚して妻子もいる。ルークの「家族と愛はジェダイを強くする」を体現したジェダイの一人だと思う。一緒に任務に就いた若きガナー・リソーディは、そんなコランを「古いジェダイ」と侮って突っかかるが、ともに行動するうちに成長していく。
・アナキンとジェイセンはフォース哲学の相違でしばしば対立。中盤まではこれがお話の柱でもあり、最後には何らかの決着が着くはずだったのだが…。
・カバーアートはルーク・マラ・レイア。シリーズの中でも最も人物が少ない。背景ではユージャンヴォングの生物戦艦とXウイングの戦いも描かれている。
アイソアへの侵攻(原題:Dark Tide II: Ruin)
続くユージャン・ヴォングの攻勢に、ようやく重い腰をあげた新共和国元老院。しかし討議に時間を費やし防衛の準備は遅々として進まない。レイアは自ら汚名を着ることを顧みず、ユージャン・ヴォングを阻止出来る位置にいる帝国残党へ支援要請に向かう。
一方、ジェダイ達は辺境惑星ガーキでの潜入任務で、ユージャン・ヴォングに強烈なアレルギーをもたらす植物を発見。ユージャン・ヴォングの司令官シェダオ・シャイも程なくその事実を突き止め、植物の原産地である惑星アイソアへと侵攻を開始する…。
・シリーズでも随一の傑作だと思う。アイソアを舞台に新共和国軍とユージャン・ヴォング軍が初めて本格的に衝突。前作と前々作は局地的な戦いだったので、スケール感が大きくなるとやはり読み応えがある。さらに一時的ながら同盟を結んだ帝国残党も頼もしい活躍を見せる。特にチスの若手パイロットであるジャグ・フェルはジェイナはもちろんギャヴィンやヴェッジにも匹敵する凄腕(まぁ、ヴェッジの甥でさらにチスの伝説的パイロット・スーンティアの息子だから血筋的に弱いわけがないんだけど)。以降、ジェイナとは甘いロマンスも描かれるなど、NJOでも重要なキャラ。
・惑星アイソアが狙われたのは、ここにしか生えないバッフォーという樹木の花粉がユージャン・ヴォングの生態系全般に致死的なアレルギーをもたらすため(ヴォングだけでなく彼らの使う生きた武器や宇宙船にもおよぶ)。序盤で出すにはちょっと凄すぎる弱点だと思うんだけど、新共和国側がゴタゴタしていたのでこれを活用するのは物語も後半になってから。
・「守護者」か「戦士」かで方針の割れていたジェダイ達も、決戦のために団結をかためる。主役脇役含め過不足無く出番が与えられていい感じ。特にソロ三兄弟は、ローグ中隊の一員として戦争の過酷さを誰よりも肌で学ぶジェイナ、前作の反省から多少なりとも成長したジェイセン、未だチューバッカの死が重くのしかかる中で新たにデシャラコアという先輩を失うアナキン、とそれぞれに物語がある。ところで、前作でみっともない負け方をしたジェイセンが今回、ガナーを一撃で倒したヴォングの戦士クラグ・ヴァルを圧倒。うーん、こんなに強いなら前作の敗北はなんだったのか。それともガナーがめちゃくちゃ弱い?
・脇役側も一作目で噛ませにされたキップ・デュロンがアイソア戦でちゃんと強いジェダイとして活躍。ガナーは前作に続きコランと名コンビぶりを発揮し、中盤ヴォングとの戦闘で負傷した後は傲慢さを改め大きく成長する。
・そして最後にコラン・ホーン。惑星を賭けてシェダオ・シャイと一騎打ちする破格の大活躍。さすがにやり過ぎたと思ったのか、アイソアを失った責任をとってしばらく引退というかたちに。
・カバーアートで初めてソロ三兄弟が描かれた。ルークのジェダイ騎士団は特に服装規定が無く、ローブではなくジャンプスーツを着ていることが多い。特にジェイセン・ジェイナはカバーだと一度もローブを着ていない。下巻で大きく描かれているのはコラン・ホーン。本編同様イラストでも恵まれた扱い。
英雄の試練(原題:Agents of Chaos I: Hero’s Trial)
チューバッカの死から半年、故郷キャッシークで葬儀が故郷で行われた。未だ悲しみから立ち直れないハンだったが、ふと再会した旧友のロアにヴォングへの仇討ちを持ちかけられ、銀河のために奔走するルークやレイアを尻目に旅立ってしまう。
一方、ユージャン・ヴォングの第二陣は次々に惑星を落とし、銀河の中心を目指していた。そしてジェダイを潰す策謀として、新たにスパイを送り込もうとするが……。
・チューバッカの死後、落ち込みっぱなしだったハンのお話。いくらか立ち直ったものの、まだアナキンやレイアとはぎくしゃく気味。
・NJO刊行当時、エピソード4以前のハンを描いた小説シリーズが複数出版されており(ディズニーが制作したハンの映画で無かったことになってしまったが)、本作ではそれにまつわるキャラクターがあちこちで顔を出す。ファンには嬉しい演出。また、エピソード5で登場した賞金稼ぎのホスクが唐突に登場。い、生きとったんかワレ…。もっともハンに嫌味を言って喧嘩したくらいで特にユージャンヴォングと戦ったりもなし。うーんこちらは雑な扱いだ。
・ハンは銀河で差別されている種族であるリンの青年、ドローマとしばし奇妙なコンビを組む。ドローマはひょうきんでかなりいいキャラをしてる。
・図書館惑星オブロア・スカイやオード・マンテルといった惑星が陥落。そんな共和国を早くも見限り、ユージャン・ヴォングに協力するピースブリゲイドと称するグループも台頭。共和国の結束は実に脆い。
・シェダオ・シャイ亡き後のユージャン・ヴォング軍には最高大君主シムラ、最高司令官ナス・チョウカ、ウォーマスターサヴォング・ラなど凄い肩書きの顔ぶれが一気に出現。他にも宗教を司る司祭グループも出てきたりして初読だと混乱するかも。
・一方、銀河侵略の先鋒としてバリバリ活躍していたかに見えたノム・アノアが無能ぶりをさらけ出すのもこのあたりから。今回は司祭と組んで共和国側へスパイを送り込もうとしたが、味方であるはずのピースブリゲイドに妨害される体たらく。まあドジっ子なノム・アノアの方がキャラとしては面白いんだけど。
・ユージャン・ヴォングのスパイの付き人として登場したヴァーゲアはシリーズにおける超重要人物。後に明かされるが旧共和国のジェダイであり、五十年前銀河にやってきたユージャン・ヴォングの偵察隊と一緒に銀河を離れていた。ちなみにそのエピソードも「ローグ・プラネット」として小説が刊行されてたり。時系列的にはエピソードⅠの三年後で、アナキンやオビ=ワンも出てくる。未読でも問題ないが、読んでおくとよりシリーズを楽しめる。
・カバーアートはうらぶれて人相が変わったハン、ルークとレイア、チューバッカの家族達、ドローマ、ユージャン・ヴォングの女スパイであるエラン。夕焼けの色合いが美しい。
ジェダイの失墜(原題:Agents of Chaos II: Jedi Eclipse)
ユージャン・ヴォングの侵攻ルートは銀河の中程まで食い込んできた。新共和国は未だ適切な対応が出来ず、次々に惑星を奪われ難民も増える一方。私欲まみれのハット達はユージャン・ヴォングと和平交渉を結びつつ、裏では共和国にも情報を売ろうとする。
不利な戦況を覆すべく、レイアは中立を保つヘイピーズ星団への協力要請に、ジェダイ達はコレリアにある古代兵器センターポイントの起動へ向かう…。
・今回登場するセンターポイントは過去作のコレリアン三部作が初出。大昔から存在する巨大なリパルサー装置で、惑星を引っ張ったり破壊したり出来るキケンな代物。要するに古代兵器版デス・スター。
・またレイアが趣いたヘイピーズも過去作「レイアへの求婚」が初出。王子のイソルダーはもと想い人であるレイアへの気持ちから、共和国への軍事支援を決意する。
・アイソア編で多少まともになったかに思えたジェイセンが再び「スパイや超兵器の起動なんてジェダイの仕事じゃないよ」とぐちぐち言い始める。今まさに銀河が危機に直面している状況で言うことではない。終盤、センターポイントを起動したアナキンに対しても撃つなと制止。そこまでは良かったがそばにいたスラッカンが割り込んで、よく狙いもせず発射。ユージャン・ヴォング艦隊半分を仕留めるが、同時に味方の四分の三を巻き込む大惨事になってしまった。アナキンからは、自分ならヴォングだけを正確に狙って撃てたと非難される。ていうか、こういう任務に何故もっと現場を監督出来る大人のジェダイを同行させないのか……。作劇上の都合とはいえ気になる。
・そんなジェイセンに比べ、傷を負ってからすっかり大人になったガナー。今回は自分より歳も技量も上なキップのブレーキ役として活躍。キップも新たな中隊を率い仲間を救出したりヴォングの戦士を立て続けに倒したりとかっこ良い。
・ルークは前回も今回も殆ど動かず仲間と討議してただけ。難民救助の前線にいるレイアや、友のためヴォングやピースブリゲイドの支配域に飛び込むハンに比べると、どうしても主役の割に消極的な感じが出てしまう。
・ジェダイ達への情報提供者であるタロン・カードは古いコミックやスピンオフから活躍している渋いキャラ。もと密輸業者だが、戦争の中で名を上げ共和国と帝国の和平大使まで務めている。この銀河、ハンやランドもそうだけど密輸業者とかブローカーがやたら力を持ちすぎでは?
・そのほか、映画でお馴染みのハット族がワラワラ登場。新共和国とユージャン・ヴォングの間で情報を流し漁夫の利を得ようとするが、侵略にストイックなヴォングは麻薬や賄賂に興味を示さなかったためうまくいかず。
・ユージャン・ヴォング軍は向かうところ敵無し。本作ではミッド・リム沿いに進み、不意打ちで共和国の主要造船所の一つであるフォンドアを壊滅させた。が、一枚岩に見える彼らも身内では苛烈な出世競争を繰り広げており、常に自分本位なノム・アノア、直属の上司を出し抜いて捕虜のジェダイを献上しようとするチン=カルなど独断で動く者も。後の作品では軍事的な面に留まらず、彼らの崇める宗教でも派閥争いが描かれていく。
・今回のカバーアートはレイア、ハン、アナキン、ジェイセン、ルーク、ドローマ、ハットの部族達。背後の戦艦はヘイピーズのバトル・ドラゴン。本作では出落ちでやられてしまったが…。
バランス・ポイント(原題:Balance Point)
ユージャン・ヴォングの侵略はとうとうコアワールドまで及んできた。戦いの中、ばらばらに散っていたスカイウォーカー・ソロの家族達は期せずして惑星デュロに集う。しかし、そこにもウォーマスター・サヴォング・ラ率いるヴォングたちが侵攻してきた。銀河が傾く不吉なビジョンを見たジェイセンは、フォースを使うことを拒否していたが……。
・ユージャン・ヴォングとの戦争が始まって早くも一年が経過。ばらばらに散っていたスカイウォーカー・ソロファミリーが偶然デュロで全員合流。広い銀河を舞台にしているのに、相変わらずスケールが狭いような…。
・姉や弟が第一線で戦う中、センターポイントの失敗から一人逃げ出してきたジェイセン。そしてデュロの難民キャンプで父の手伝いをしつつも「僕達は普通の人間とは違うんだ」「パパにはわからないよ」とぐちぐち文句を並べる。ついには二度とフォースを使わないと極端なことまで言い始める始末。リアルタイムの読者でコイツに共感してた人っていたんだろうか…。作中の立ち位置にしても、ジェイナが軍のエースパイロット、アナキンが新世代のリーダー格と明確なのに対しジェイセンはいまいちぱっとしないのも良くない。
・ルーク夫妻はマラの妊娠でなんだか浮かれ気味。辛い展開の中での明るいニュース。常に希望を捨てないルークのスタンスが素敵。
・ハンの心の隙間を埋める相方だったドローマが今回で一時退場。普通にいいキャラなので、ずっと一緒にいてくれても良かったんだけどなぁ。
・自ら生成した毒でマラを殺しきれなかったノム・アノア。今度は瓦礫を落として圧死してしまおうとする。が、当然そんな手でジェダイを殺せるはずもなく。すっかり道化っぷりが似合うようになってきた。
・マラの新たな愛機、ジェイド・シャドウが登場。例によってランド達による違法改造マシマシな武装シャトル。こんな強力な代物を変な経路で手に入れるからジェダイ達が政府に危ない集団だと批判されるのでは…と思う。
・多数の難民を受け入れたデュロだが、種族の違いや差別のせいで対立が絶えない。政府や支援組織も利益をかすめ取ったりユージャン・ヴォングに内通してたり、現実の難民問題を彷彿とさせる描写が沢山。ここらへんは人種のサラダボウルなアメリカならではだろうか。
・ラストはフォースに戻ったジェイセンとサヴォング・ラの一騎打ち。ウォーマスターとかいう大層な肩書きを持つラだが、あっさりジェイセンに敗れてしまう。そもそもジェイセンがこれまで強いジェダイとしてちゃんと描かれてなかったので、シチュ自体は悪くないのになんだか盛り上がらない感じになってしまった。
・ところで本編では特に説明されないのだが、本作以降人物紹介で一部ジェダイ達の肩書きが変わっている。キップやカム・ソルサーはジェダイマスターに昇格、ソロ三兄弟も修行中→ナイトに。しかし後者については続作で正式なナイトの昇格式が描かれているため、何だかよくわからないことに。
・また、本作と次作の間には未邦訳の短編「Recovery」がある。
・カバーアートはスカイウォーカー・ソロファミリーが全員集合。アナキンは髪形を変えてイケメン度合いがぐっと増した。ジェイセンは主役なのに雑なうつり笑。ジェイナはバクタ治療中の場面。逆さまでタンクに入ってるのはイラストの見栄え優先とはいえ苦しそうだ。
征服(原題:Edge of Victory I: Conquest)
ジェイセンに負けた屈辱から、サヴォング・ラは全銀河へジェダイを差し出すよう脅迫。恐れに負けた人々によってジェダイ狩りが始まる。
そんな中、アナキンはヤヴィン4のジェダイ・アカデミーが狙われる夢を見て、単身Xウイングで駆けつけた。大半の仲間を助けたが、親友のタヒーリがヴォングに捕らわれてしまう。負傷してライトセーバーも失ったアナキンの前に現れたのは、奴隷階級に落とされたヴォングの兵士だった。ヴァ・ラプーングと名乗るその男は自分の復讐のため、アナキンに助力を申し出るが…。
・何故か本作以降、翻訳は漢字2文字のタイトルが連続する。だからなんだという感じだけど。巻末解説によるとファンサイトで邦題のアンケートをとっていたらしい。
・サヴォング・ラの脅迫により、全銀河でジェダイ狩りが発生。といっても、僅か百人しかいないんだから探すのはめちゃくちゃ大変な気が……と作中の悪人達も思ったのか、ジェダイの子供達が集まるヤヴィン4のアカデミーが狙われることに。
・冒頭で犠牲になったドースク82は過去シリーズからの再登場。散り際は悪くなかったが、せっかくならもっと出番を与えてから退場にするとか扱いを考えて欲しい。これまで名前すら出てきてなかったのに…。
・アカデミーにいる小柄なエイリアンのイクリットは本作より前の「ヤング・ジェダイ・アカデミー」シリーズから登場したキャラで、ヤヴィン4に封印されていた古老ジェダイ。これまたアナキンとタヒーリを逃がすため犠牲になるが、後々の展開を考えるとやはり無駄死にな感じが否めない。
・タヒーリはヴォングに捕まって改造手術をされてしまう。なんかえっちで燃える展開なのに描写がイマイチ。やっぱりこういう方面にかけては日本のエンタメが一枚も二枚も上だと思う。あと、何気にシェイパー達の会話で後に出てくるヴォクシンの伏線があったりする。NJOは複数作家によるリレー小説だけどこういう連携が取れてるところは好感が持てる。
・本作の見所は、目的のため止むなく手を組むことになったアナキンとラプーングの奇妙なコンビ。機械大嫌いなラプーングの反応がいちいち面白い。アナキンは壊れたライトセーバーをユージャン・ヴォングの生きたクリスタルで修理し、それによってこれまで感知出来なかったヴォングをフォースで感じ取れるように。ここまでアナキンを特別な存在として描いておきながらシリーズ中で殺してしまったのはやっぱり良くなかったと思う。
・コランの義父・ブースター・テリックは個人でスター・デストロイヤーを所有している。一介の密輸業者がそんなヤバイものを持ってていいんだろうか。そして本作以降、そこでお世話になるジェダイ一行。こういう怪しいバックに頼るからジェダイが危ない集団だと(ry
・本作ではユージャン・ヴォング内部の宗教問題が描かれている。生物工学を担当するシェイパー階級の一部には、神々の存在を否定する異端派が存在。また神々にも見捨てられている奴隷階級は、アナキンの助けで地位を復活させたラプーングを見て、ジェダイに救いを見出し始める。このあたりは現実の人類史になぞらえて読むと興味深いところ。特に宗教の重みは日本人より海外の方が根深くて共感しやすいかもしれない。
・本作と次作の間には未邦訳の短編「Emissary of the Void」がある。
・カバーアートはルーク、マラ、アナキン、タヒーリ、イクリット、ラプーング、メジャン・クワード。ルークはかっこよくセーバーを構えているが本編ではまったく戦闘シーン無し笑 一種のカバー詐欺だが、これについては後書きできちんと説明がされている。