弾詞小説を書いた女流作家たちのこと

中国には弾詞小説というジャンルがある。いわゆる語り物文学の一種で、字の読めない大衆向けの娯楽として愛された。ジャンルは才子佳人や英雄ものなどこれまた庶民好み。なので中国の文壇からは低俗とみられてあまり評価されてこなかった。
ところで、興味深いのがこの弾詞は聴衆のみならず作者側にも女性が結構存在していたこと。
当時の中国文壇は基本的に男性オンリーの世界。そこに入っていける女性というのは、裕福な学問の家系に生まれたお嬢様とか、文人層を客にする妓女といった僅かな層のみ。
弾詞の大半は既存の有名作品もしくは流行ジャンルの二次創作だったようだが、なにせ結構な数が作られていたので中には強烈なオリジナル性と作家性をもった作品も希に存在した。わかりやすくたとえるなら、現代でもいわゆる「なろう小説」は似たり寄ったりを批判されるくらい大量生産させられてるけど、売れてる作品の中には頭一つ抜けた質や個性を見せるタイトルもあるから、それと似たような感じだろうか。
封建社会の窮屈なルールのもと、家の奥に押し込められている女性たちが、自分の境遇を慰めるために創作へ情熱を注いでいた時代のことを考えると、なんだか胸が熱くなる。
古装ドラマの題材としてもの凄く面白いと思うんだけれど、私は弾詞小説を描く女性作家を主人公にしたような作品を本場大陸もので見たことがない。知ってる方がいたら是非教えてください。